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藤田の家で 2

「母さんも、『馨が両想いになれて良かった』って、言ってたわよー」  ちょっと待った?! 俺達の関係を母親も知ってるのかよ、藤田馨は男だろ? って、家族なんだから当然分かってるよな。それよか、息子に彼氏が出来て、「良かった」って言ってるのか、母親も? 「牧野君、どうしたの?」  俺は1人でパニックに陥っていた。本当に良いのか? いや、俺達にとっては、ありがたい事なんだろうけど――。 「……あの……お姉さんも、お母さんも知ってるんですか? 俺たちのこと」  俺が恐る恐るそう聞いたら、藤田も姉さんも笑い出した。 「「そんなの家族なんだから、当然でしょ?」」  藤田と姉さんが同時に言った。 「あの、まさか、お父さんは……」  俺は気になって聞いてみた。まさか、父親とそう言う会話はしないだろう――。 「まだ、親父には話してないよ」  藤田が残念そうに言った。 「そ、そうか。さすがにそうだよな」 「あ、でも、安心してよ。牧野と付き合うことになったと話はしてあるから。ただ、深い関係になってるとは話せてないんだ」 「いや、それは話さなくても良くない?」  大体そんな繊細な事、付き合っている相手が女の子だとしても、親には話さないと思うんだけど……?   あまりにも藤田の家族がオープン過ぎて、俺はどう反応したらいいのかわからなくなった。 「馨ったらね、いっつも牧野君の事話してたのよ。『今日は牧野といっぱい話出来た』とか、『宿題見せてやったんだ』とか」  藤田の姉さんが藤田を小突きながら話を続けた。 「――」  もしかして、俺……食卓の話題にもなってたんだ? もう、恥ずかしいを超えているそ。 「昨日は、馨、とってもご機嫌でね。これは牧野君と何かあったなーって思ってたのよ」  藤田の姉さんが藤田の頭をポンポンと叩きながら笑っていた。 「言うなよー、姉ちゃん。恥ずかしいじゃん」  『言うな』とか言ってるわりに、藤田の奴、すごい嬉しそうで、一緒にいるこっちが恥ずかしくなるよ。  まぁ、家族に反対されてないのは、良い事なんだと思うけど……でもなぁ――。 「じゃあね。母さんが居るんだから、あんまりイチャイチャしないように」  藤田の姉さんが、そう言いながらドアの方に歩いて行った。 「わかってるよ、今日は何もしないんだもんな。ねー、マキちゃん」  藤田が俺の手を取り、可愛い笑顔を向けた。 「……」 「いつもイチャイチャしてると飽きちゃうから、ほどほどにね。じゃ、私はちょっと出かけてくるわ」  藤田の姉さんはドアを開けて、部屋を出て行こうとしていた。 「また彼氏んとこ?」 「そ。だって、会いたがるんだもん、あいつ」  豪快に笑っていた藤田の姉さんがこっちを向いて、恥ずかしそうに微笑んだ。頬が赤くなって、可愛らしく見える……って言うか、やっぱり、藤田によく似てるな。 「はいはい。じゃあね、いってらっしゃい」  藤田の言葉に送られて、藤田の姉さんが部屋を出て行った。  俺は、呆気にとられたまま、その様子を眺めるばかりだった。 「さて、続きをやろうか?」  藤田が俺の返事を待たずにゲームを再開した。

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