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藤田の家で 3
「なんか、藤田、お前ってすごいよな」
しばらくしてから俺は、ゲーム画面に集中している藤田に声をかけた。
「え、何が?」
視線を動かさないで必死にゲームの操作をしている藤田が、面倒臭そうに呟いた。
「いや、お前の家族がすごいのかな……」
まだちょっと、お前の家族のノリにはついて行けなさそうだけど……ま、その事は考えるのをやめておくとして。
藤田、お前は、可愛くて、面白くて、明るくて、前向きで。俺はそんなお前が大好きだ!
俺は、負けが決まりそうになっていたゲームのコントローラーを投げ出し、藤田を抱きしめた。
「マキちゃん! 何もするなって言ったのはお前だろ?!」
ゲームオーバーになった画面を睨みながら、藤田が呟いた。
「あ、ごめん」
謝りながら藤田の身体に回していた腕を解くと、やばいスイッチが入ってしまったようで、藤田が熱い視線を俺に向けていた。
「なぁ、してもいいよ。牧野」
おっと、ヤバイヤバイ……。俺としたことが――。
「ば、ばか言え。お袋さん居るから無理じゃん」
俺は後ずさりしながら、迫りくる藤田から逃げた。
「俺、声出さないようにするから」
それって、俺がやるって事か。そりゃ、いつかは、藤田を抱こうと思ってたけど、今日?それも母親がいるのに?
あの、俺、まだ女も男も抱いた事ないんだけど?!
「いや、そういうことじゃないだろ、藤田」
壁際に追いつめられて、逃げる所がなくなってしまった俺は、両手を突っ張り、藤田の身体を押し返そうと踏ん張った。
「やり方わからなくて不安?」
藤田が柔らかく微笑んでから、俺の頭をスッと触った。ドキッとして、ある一部に一気に血が集中してしまった。
「そ、それもあるし」
「昨日の俺のやり方、思い出してみると良いよ」
そう言えば、なんかクリームみたいなの使ってたな……ゾクッとしたけど、気持ちよかったのも確かだ――って……
「だから、そうじゃなくてさ!」
俺はもう一度藤田の身体を押し返そうとした。でも、藤田は一瞬で俺の両手をはらいのけた。そして鼻と鼻が触れるくらい顔を近づけると「そうじゃないの? じゃあ、やっぱりマキちゃんが我慢する? 声――」と低い声で囁いた。俺は一気に脱力してしまい、そのまま藤田に抱きしめられていた。
「ま、待て藤田。今日はダメだ、絶対しない。次回、次回こそ、俺がお前を抱くから。だから……うっ」
必死に訴えている俺の声を、聞いているのか聞いていないのか、藤田が唇を寄せてきて、俺の訴えはすぐに藤田の唇に飲み込まれてしまった。
しかも、片手は超元気な状態の俺の股間を愛しそうに撫ぜてるし!!
おい、それはダメでしょ? 藤田くん――。
「んっ――」
不覚にも俺がそんな声を出してしまうと、藤田が唇を離し俺を見つめ、ニヤッと笑った。
「もう。マキちゃんが悪いんだよ。今日は我慢しようと思ったのにさぁ」
息が上がりそうになっている俺を見て楽しんでいるようにも見えて、メチャ悔しかった。
「……ダ、ダメだよ、やめろ……」
俺が嫌がっても、股間を撫でている手を緩める藤田ではなかった。
「何だよマキちゃん。その声、誘ってるみたいだよ?」
「ち、ちげーし!」
「わかった。じゃあ、俺が良いことしてあげるから」
藤田は股間をなでるのを止めると、ゆっくりとチャックをあけた。
「お、おい!」
元気いっぱいの俺の息子に、藤田の手が触れると――
あぁ、これは、経験の差なんだろうか?
なぁ、藤田。お前は誰とそんな経験したんだよ?
おわり。
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