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ゴメン、嘘つきました 2(柿本)
さっきから、教室の後ろの方で、藤田と牧野がいつものように、いちゃいちゃしている。
と言うか、今日は何やら言い争っているみたいだな。
それにしても、あいつら、何で付き合ってるんだ? ここは男子校じゃないし、可愛い女子だって結構いるっていうのに……。俺には、まったく理解出来ない。
藤田と言えば、綺麗系っていうか、わりと可愛い顔立ちしていて、しかも面白いしフレンドリーだから、女子に人気もある。牧野だってカッコいいし、少し無愛想で口は悪いけど、すげー優しい奴だから、密かに憧れている女子も多いって聞くのに――。
何が悲しくて男同士で付き合って、そんでもってセックスまでせにゃならんのやろ?
しかも、あいつらの会話の端々を聞いてると、抱かれてるのは牧野みたいだし(俺って何気にあいつらの会話を聞いているんだよな)。これもマジ、解せない。誰が見ても、藤田が女役だろうが?
でもまぁ、そこは本人同士が良ければ、文句を言う筋合いなんてないさ。そして、もちろん、愛があってのセックスなんだと思いたい。
が……まさか、血気盛んなお年頃の性欲処理的な付き合いってわけじゃねーだろうな?
だとしても、俺には関係ないから、どうでもいいことなんだけど……。
「なぁ、柿本、一緒に帰ろうぜぇ」
変な想像をかき消すため、頭をプルプル振っていると、急に藤田の声がすぐそばで聞こえた。
「へっ?」
焦った俺は間の抜けたような声を出していた。
いや、ちょっと待て、何で俺と帰るんだ、藤田? もしかして、俺のこと誘ってますか?
「はぁ? 何で俺? お前、牧野と帰るんだろ?」
牧野と一緒に帰らない、という会話はチラッと聞こえていたが、俺はあえてそのことに触れないようにした。
「いいんだよ、あんな奴。ちっとも面白くない」
藤田が不機嫌丸出しで言った。
「痴話ゲンカかよ。俺に飛び火させないでくれ」
2人のいざこざに巻き込まれるのは面倒だと思い、俺は正直に言った。
「別に、ケンカじゃないし。あいつは、いつも一緒じゃなくたって良いんだって」
そう言った藤田の顔、ちょっと寂しそうで、ちょっとヤバイって思った。その寂しそうな顔、微妙にそそられるかも知れない――。
いやいや、待てよ、こいつはやるほうなんだよな? という事は、俺とそういう関係になったとして、入れられるのは俺って事か? マジ有り得ない。俺は男だから、やっぱり攻めたいよな……。
――って、おいおい、勝手に暴走するなよ、俺の脳みそ。
「まぁ、別に、一緒に帰るだけならいいけど」
俺がポロッとそう言ったら、悲し気だった藤田の表情が急に険しくなった。
「はぁ、柿本? 何考えてんだよ? 帰る以外に何があるっていうのさ」
やばいやばい。藤田が不機嫌になってるぞ――。
「あっ? 別に何もある訳ないよなー」
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