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ゴメン、嘘つきました 3(藤田)
牧野って、どうして学校だと冷たいんだろう? もう少し普通に会話してくれたって良いじゃないか。……付き合う前も、牧野はすごく喋るってタイプではなかったから、あいつにしたら、前と変わってないと思っているだろうけど。
でもまぁ、牧野のことだから……俺たちの関係がバレるのが、嫌だからなのかも――。
だけど、柿本にバレてるってことは、そのうち他の奴にも絶対伝わると思うんだよな。
俺は別に、みんなにバレても平気だと思ってるし、少しでも長く一緒にいたいから、牧野が部活の日も、今のところ牧野を待って一緒に帰ることにしてる。でも、牧野はそれも嫌だったのかもな。
だから、「一緒に帰れない」って俺が言っても、全然気にしない感じだったのかな。
あーあ。ベッドの上では、あんなに可愛いのに。俺に甘えて、何度も「キスして……」なんて言ったりしてんのにさぁ。学校じゃ、まったく違うんだよ。
でも、まぁ、そのギャップも良いと言えば良いんだけど……。
教室を出て、廊下を歩きながら俺はそんなことを考えていた。
「おい、藤田。なに、ボケッとしてんだよ? そんなんなら、俺のこと誘わないで1人で帰れば良かっただろ」
隣で歩いていた柿本が、怒ったようにそう言いながら俺の頭を叩いた。そうだ、柿本の存在をすっかり忘れていた。
「イテーな……。俺、別にお前の事なんて誘ってないぜ?!」
ムッとしてそう答えると、柿本がもう一度俺を叩いた。何するんだよ?! この暴力男め……。
「あん? 何言ってんだよ、一緒に帰ろうって言ったのはテメーだろが」
あぁ、そうだ。そう言えば、そうだった……牧野に当てつけたつもりだったんだ。
でも、牧野は俺の事を見てなかったみたいだし、気づいたときには教室から居なくなってたんだ。
「いや、それは申し訳ない――」
俺が頭を下げて謝ったというのに、柿本は何も聞いてないようで、隣でブツブツ文句を言いつづけていた。
そして、靴を履き替え、校舎を出た俺と柿本は、体育館のそばを通り過ぎようとしていた。
体育館からは、キュッキュッとバッシュの鳴る音が聞こえていた。多分、牧野たちバスケ部員はランニングしている頃だろう。
チラッと体育館の方を見ると、俺のマキちゃんが走っている姿が体育館の窓から見えた。部員は何人もいるのに、マキちゃんをすぐに見つけられるのは……やっぱり、大好きな相手だからなんだろうな。
「かっこ良いよなぁー」
俺が牧野の姿を見ながら呟いたら、隣に居た柿本は何を勘違いしたのか、急に俺の肩に腕を回してきた。
「ん? 俺ってそんなにかっこ良い? 藤田君、マキちゃんから俺に乗り換える?」
とのたまった。
「はぁ?」
あまりにも見当はずれのことを言われ、俺は間の抜けたような声を出してしまった。
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