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俺と牧野の夏休み 3
自転車で15分位走ると、大きな市営の公園に着いた。ここには、確か8種類くらいのプールがあるはずだ。 小学生の時は、夏になると必ず来ていたんだけど、ここ数年、来ることもなくなっていた。だから久しぶりなのもあって、俺は小学生の頃のようにテンションが上がっていた。
あ、牧野が一緒だから余計にね――。
駐輪場に自転車を止めて、公園の中を横切り、プールまで歩いていく。その間、手を繋ぎたかったけど、それは我慢した。牧野の性格からいくと、そんな事したら、メチャ恥ずかしがって、暫く口を利いてくれないかもしれない。そうなったら、楽しいはずのプールが楽しくなくなってしまうものな……。
「なぁ、マキちゃんはどんな水着?」
俺は歩きながら聞いてみた。牧野の事だから、ごく普通のだとは思うんだけどね。
「え? カーキ色のサーフパンツだけど……」
牧野が不思議そうな顔をして、俺のことを見た。
「へー。なーんだ、そうか」
俺がわざとつまらなそうに答えたら、牧野がビクッと反応してくれた。
「ちょっと待てよ、馨。まさか、お前、こーんな小さいやつとかじゃないよな?」
股間の前に両手で小さな三角形を作りながら、牧野が困惑気味に聞いてきた。
「あははは! そんなわけ無いじゃん。そんな小さいのじゃ、マキちゃんの水着姿見て興奮した時、困るじゃん」
『先っぽが出ちゃうしね』って続けたら、牧野に「アホか!」って頭を叩かれた。冗談に決まってるのに……。
「まったく、お前、何考えてるんだよ……」
赤い顔しながら牧野が言った。なんだかんだ言いながら、牧野も想像してるんでしょー?
「そりゃ、俺はいろんなこと考えてるよ。大好きなマキちゃんと裸でプールだぜ? 考えないわけ無いじゃん」
満面の笑みを浮かべながら俺はそう言った。正直すぎってまた怒られそうだな。
「裸ってのと、ちょっと違うと思うけど」
牧野が耳まで真っ赤になりながらそう呟いた。怒られなくて良かった……牧野も俺に慣れてきてくれたのかな? なんて思っていると、牧野が俺の頭をクルリと撫でてから、ポンと叩いた。なんだかなぁ、本当にマキちゃんは可愛いんだから!
公園の奥の方にあるプールの施設に着くと、俺達はすぐに更衣室で水着に着替え、そして、冷たいシャワーを慌てて通り過ぎ、プールに向った。
「なぁ、馨……浮き輪なんて、恥ずかしくない?」
俺は、姉貴から大人用の浮き輪と、ビーチボールを借りてきた。
「だって、流れるプールでは、浮くものが無いと面白くないじゃん。波のプールもそうだし」
まきのー、お前はどうやって遊ぶつもりだったんだよ? まさか競泳用のプールを何回も往復するつもりだったのか? 運動が得意な牧野ならやりそうだから、ちょっと怖いぞ。
「流れるプール……あ、そうだよな……」
そう言って、牧野がまた照れたように笑った。その顔を見て俺は、『そんな牧野も大好きだ……』って思っていた。
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