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俺と牧野の夏休み 4

「さぁ、どれから行こうか?」  賑やかな子供達の歓声に、かき消されないようにと、俺はちょっと大きなめな声で牧野に聞いた。 「まずは、ここ入って、それから全部回ろう」  眩しい青空を見上げてから、牧野が答えた。 「そうだね」  公園の方からたくさんのセミの鳴く声が聞こえている。まさに夏真っ盛り。 「よし、行くぞ!」  牧野の声が嬉しそうだったから、俺のテンションはますます上がるのだった。  最初に入った浅めのプールで、俺達は水の掛け合いをした。超ベタだとは思ったし、何が楽しいんだ? と聞かれそうな感じだったけど、キラキラ光る水のむこう側で、はしゃいでいる牧野を眺めてるだけでも、俺は純粋に楽しかった。  それから俺たちは、幼児用のプール以外は殆どまわったと思う。流れるプールは後でゆっくり入ることにして、波のプールや、俺が大好きなウォータースライダーにも行った。  牧野はウォータースライダーをやったことがなくて恐がっていたから、「嫌だったら、俺1人で行ってくるよ。牧野は俺が滑るとこ見てて」って言ったら、牧野が「俺も行く」と言い出した。1人で待っているのが嫌だったんだって。  でも、滑ってみたら、思ってた以上に楽しかったらしくて、「もう一回行こうぜ!」って言って、何度も長い列に並ぶことになってしまった。  ま、俺も楽しかったから良いんだけどね。  怖がりな牧野が、「うおー」とか「ギャー」って言いながら滑ってる姿もなかなか萌えたよ。  12時少し前に、昼飯を食べて一休みしてから、流れるプールのある場所に向かった。  昼の時間だったからか、流れるプールは思ったよりも混んでいなかった。 「やったー」  牧野と一緒に流れるプールなんて……って考えただけでもテンションが上がっちゃって、俺は思わず走り出しそうになっていた。 「おい、馨!」  その時、牧野がパッと腕をつかんで、前のめりになっていた俺を止めてくれた。 「あぁ、危なかった。サンキュ、牧野」 「まったく、藤田は子供だよな」  牧野がそう言って笑った。 「そうだよ、俺はまだまだ子供なんだよ。だから、迷子にならないように手を繋いでて」  俺がふざけて牧野の手をつかむと、牧野が慌てたように手を振りほどいた。 「バーカ」  2人でしばらくバカだアホだと言い合いながら流れるプールのところまで歩いて行った。 「飛び込むなよ」  プールサイドで牧野が言った。 「わかってるって。小学生じゃないんだから」  俺がそう言うと、牧野が「おこちゃまな馨だから、やりそうだって思って」と笑った。  眩しい太陽のもと、こんな感じで大好きな牧野と一緒に過ごせるなんて、ホント幸せだ!

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