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俺と牧野の夏休み 5

 俺は先に流れるプールに入り、牧野に浮き輪を被せてもらった。 「ほら! 牧野、つかまって良いよ」  俺が浮き輪の後ろをポンポンと叩いて牧野をさそうと、牧野は目をそらしてビーチボールを指さした。 「え、良いよ、これで」  俺の考えでは、牧野に浮き輪の後ろ側に抱きつくような感じで、つかまってもらいたかったのに、当の牧野はすでにビーチボールを抱えて俺の横にならんでいた。 「ダメだよ。じゃあ、牧野、交代して」  牧野が大事そうに抱えていたビーチボールを奪いとり、俺は牧野に浮き輪を被せた。 しばらく俺はビーチボールにつかまったまま、フワフワ流れに乗っている牧野の側を漂っていた。 牧野は浮き輪を嫌がると思っていたのだけど、意外にも、嬉しそうな顔をして浮き輪の中におさまっている。やっぱ、牧野、可愛いぞ……。  その時、俺は閃いた。俺はビーチボールの栓をこっそり外し、中の空気を少しずつ抜いていった。 「あれれ? 空気が抜けてきた……穴、開いちゃったかな」  俺はそう言って、栓をしなおしたビーチボールを見せてから、牧野が入っている浮き輪の後ろ側につかまった。 「ちょっと、おい!」  牧野が焦ったように俺の手の甲をパシッと叩いた。 「大丈夫だって。大人用の浮き輪だから、2人ぐらい余裕で浮かせてくれるし」  牧野が言いたいのは別の事だと思うけど、俺は適当に答えると、浮き輪越しに牧野の腕につかまった。 「楽しいよなー」  ちょっと戸惑たったような顔をしていたけれど、誰も俺たちの事を気にしていなさそうだと気づいたのか、牧野はそのままの状態で「あぁ、楽しいな」って答えた。  俺たちはそのまま、流れるプールで暫く流されていた。牧野もまんざらじゃなかったようで良かったなぁって思った。  牧野の楽しそうな顔を見ているうちに、俺は悪戯心が湧いてきて、水の中で手を伸ばし、牧野の股間をちょんちょんと触ってみた。 「おい!」  牧野は焦ったようにそう言って、俺をジロッと睨んた。 でも、牧野の股間、ちょっとの刺激で、すぐ元気になってさ。俺は嬉しくなっちゃったから、もう一度触ってみることにした。そしたら、今度はビクッと反応してくれて……。 で、牧野ったら真っ赤になって、一生懸命、俺から身体を遠ざけようとしていたんだ。  あんまりやると怒られるから、手を浮き輪の上に戻したんだけど、その後、牧野がなんだか落ち着かない感じになっていて、それを見てた 俺も、むず痒いような気分になってきてしまったのだ。 「なぁ、馨?」  しばらく、お互いに無言で、漂っていたけど、牧野が急に意を決したように、俺の手に触れた。 「なに、牧野?」 「あのな……」 「うん」 「あのな、俺んち今日、親、居ないんだよ……」  その後、ごにょごにょと何か呟いていた。そうか、牧野。2人っきりになりたいんだな。わかるよ、俺もなんだよ――。 「そっか。じゃぁ、後、もう一度、波のプールで遊んだら、帰ろうか?」  本当は、俺もあんまり余裕が無かったんだけど、ちょっと意地悪してそう言ってみた。すると、牧野が情けないような、泣きそうな顔をした。  そんな顔されたら、もう我慢できないよ、俺も。 「なんてね、俺も2人きりになりたい。すぐに帰ろう」  牧野の手を腕を掴んでそう言ったら、牧野が安心したように笑ってくれた。 「あの、でも、ちょっとこれが落ち着いてからな……」  牧野が下のほうを指さしながら言った。そうだよね、このままじゃプールから出られないもんな。 「俺もね……」    牧野の家に行ったら、思いっきり汗をかいて、暑い夏を感じよう。  夏を感じるんじゃないかな? 思いっきり汗をかいて、お互いの愛を感じよう! おわり。

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