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甘いキス 3(牧野)

「ちょっとさ、君、一年生だろ? 先輩の名前を呼び捨てにするなんて、失礼じゃない?」  急に藤田がマジメな顔をして、そう言った。すると意外にも、彼女は素直に藤田に頭を下げた。 「すみませんでした、藤田馨先輩。ですが、あの、申し訳ないんですけど、今私、牧野先輩と話してるんで、邪魔しないでいただけますか」  表情がすごく恐い。普通にしてると、かなり可愛いと思ったんだけど……。言い方にもメチャメチャ棘があった。藤田に向けられた視線も、まさにガンを飛ばしてるって感じだ。  だけど、そんな彼女の視線にも言葉にも、俺の藤田は動じなかった。こいつもやっぱりすごい奴だ。 「わかったよ。邪魔して悪かったね。じゃ、マキちゃん、俺先に帰るけど、部活終わったら、うちに寄って。待ってるから」  藤田の奴が、そう言って俺の頬にキスをした。 「おい、馨! 何すんだよ!」  怒ってはみたけれど、もしかしたら、この状況を抜け出せるかも? 「ゴメンゴメン。学校では、するなってお前に言われてたよね。後でゆっくりしようねー」  藤田が嬉しそうに手を振りながら帰っていった。 「何あれ?! 許せない! 私の牧野先輩に何するのよ!」  この状況を抜け出せるかも……という淡い期待は消え去った。彼女も負けていなかった。 「だからね、あいつが俺の恋人なんだよ。君の気持ちには答えられないから」 「良いです。すぐには無理かも知れないですけど、いつか、あの藤田馨と別れたら、私の事を真剣に考えて下さい!!」  俺の断りの言葉が聞えていないかのように、彼女がビシッとそう言って、俺に袋を無理やり押し付けて、走り去ってしまった。  ものすごいパワーかもしれない。もし藤田と別れたとしても(ありえないと思うけど)、彼女と付き合うのだけは遠慮したい。

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