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甘いキス 5(藤田)
今日はバレンタインデー。俺と牧野にとって、初めてのバレンタイン。
だけど、牧野はチョコとかくれるんだろうか? あいつの性格からいって、期待しないほうが良いような気がするけど――。
俺? 俺はもちろん……。姉貴と一緒に手作りチョコしたんだ。
姉貴はトリュフとかいうのを作ってたけど、俺は、市販のクッキーとか、マシュマロに溶かしたチョコをつけた程度。だけど、ラッピングとカード作りには力を入れたんだ。
まあ、受け入れる役割してるのはマキだけど、気持ち的には俺のほうが女の子っぽいかなーとか思う。それでバランスが取れてるんだから、俺たちってすっごい相性が良いんだよね。
授業が終り部活のある牧野と分かれてから、担任に頼まれた用事を済ませると、俺は帰る為に下駄箱に向った。
去年は女の先輩からのチョコが2~3コ入ってたりしたけど(下駄箱にチョコって言うのも、何だかなぁって思ったっけ)、さすがに今年は何も入って無かった。
今の俺は、牧野とラブラブで他の奴なんて目に入らないし。お断りするのも面倒だから、別に良いんだけどね。
校庭を横切って、体育館の脇を通り過ぎようとした時、ふと思い出した。
牧野の部活、もう少ししたら始まるだろな。部活の帰りに家に寄って欲しいと伝えたけど、もう一度言っておかないと心配だ。絶対今日渡したい。俺の愛のこもった手作りチョコ。
牧野はいるだろうか? そう思いながら、体育館の入口に近寄っていった。
あれ? ちょっと待てよ! 体育館の前に居る男女、男は牧野じゃないか! それも、女が俺のマキちゃんに、何かを渡そうとしているぞ!
牧野ったら、女との会話に夢中で、俺が近づいても気がつかない。でもまぁ、どう見ても、あいつが呼び出したわけでは無さそうだけど。
「マキちゃん! 何してるの?」
声を掛けたら、牧野の体がビクッと緊張するのが分かった。
「何……って、別に何も――」
おいおい、何でもなくないだろ? その状況は、女にチョコを渡されてる以外の何ものでもないじゃないか。俺に見られて焦ってるってのは、やましい気持ちがあるからか?
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