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甘いキス 7(藤田)

 家に帰えると、姉貴は当然帰って居なかった。今日は彼氏とラブラブデートだろうな。俺だって、あとで牧野と……ちょっとだけいい事しようかな? 母さんが居るから、最後までは無理だけどね。  早く来ないかな? 牧野――。  ベッドに寝そべってウトウトしてたら、眠ってしまったようだ。時計を見ると、すでに牧野の部活が終わってるはず。今頃、うちに向っているだろう。  俺は慌てて制服を脱いで、部屋着に着替えた。  ちょうど着がえ終わった時、母親が俺を呼んでいる声が聞えた。 「かおるー、牧野くんよ」 「はーい、上がってもらって」  牧野が、母親に挨拶した後、階段を上がってくる足音が聞えた。 「マキちゃん! 待ってたよ」 ドアを開けて、牧野に抱きついた。 「おい、馨」 「ほら、早く部屋に入ってよ」  牧野を部屋に引っ張りいれ、ドアのカギを閉めると、冷えきった牧野の唇にキスをした。 しばらく抱き合ったまま、キスをする。あぁ、幸せだ。  キスの後、2人で寄り添ってベッドに座った。俺は、さっきの彼女の事が気になって、あの後の展開を聞いてみた。牧野の愛情を疑うつもりは無いんだけど、どうなったのかは気になる所。 「なぁ、さっきの彼女、どうした?」 「え? あー、あの子ね」  牧野がちょっと嫌そうな顔をした。 「何? マキちゃん、断われなかったの?」 「いやね、断わったんだけど、無理やりチョコを押し付けられた」  彼女が牧野の話を聞こうともしなかった事や、その一部始終を部活の皆に覗き見されてた事を、牧野がちょっと面倒臭そうに話してくれた。  その間中、牧野は俺の手をしっかり握っていてくれて、「好きなのは藤田だけだよ」って気持ちが伝わってきて、すごく嬉しかった。 「それで、チョコは?」 「あ、カバンに入ってる。学校で捨てるわけにもいかないし――」  牧野がそう言った。 「せっかくだから、食べちゃおうぜ。これに入ってる?」  俺は牧野の鞄を持ち上げた。 「あ、うん……」  牧野が、鞄をあけて、彼女に渡された紙袋を取り出した。 ピンクの水玉のついた袋には、ピンクの飾りリボンがついていた。俺は牧野の手から、その袋を取り上げ、中を覗いてみた。 「ホレ、手紙。宮坂明子(みやさかあきこ)て名前だったんだね、彼女」 「あぁ、そう言えば名前も聞いて無かった」 「私の牧野先輩へ。だって」 「読むなよ。捨ててくれ」 「ふーん。良いの?」 「良いも悪いも、彼女は絶対パス」 「じゃ、捨てるし」  彼女の熱烈な? ラブレターを破り捨てた。ちょっと彼女が可愛そうにも思えたけど、そんな甘い事言ってたら、牧野を取られてしまいそうだ。

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