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大好きだから 3
「――何で分かるんですか?」
ほんの少し間があってから、宮坂がムッとした顔をして藤田に聞いた。
「君の性格からいくと、そうじゃないかな? って」
藤田が穏やかな声で言った。こういう時の藤田って、いつもの軽いのりの時と違って、怖い雰囲気もある。戦いの前の静けさ……のような――。
「だったら、なんだって言うんですか?!」
宮坂が冷たい声でそう言った。
「ん? だったらね、俺からあげるよ」
「「え?!」」
宮坂もだけど、俺も驚いてしまった。藤田の顔を見ると、妙に楽しげだった。
「ちょっと待ってて」
藤田がそう言って、自分の席に戻り、何かの包みを持ってきた。
「はい。あのチョコレートブラウニーは、全部俺がもらっちゃったから、俺からお返し」
藤田がニッコリ笑って、包みを差し出すと、心なしか宮坂の頬が赤くなった。
そして、驚いた事に、あの宮坂が、恥ずかしそうに、その包みを受け取ると、何も言わずにサッと走って行ってしまったのだ。
「おい、藤田……お前、何あげたの?」
席に戻って、昼飯の続きを食べながら俺は聞いてみた。
宮坂に何をあげたのか、俺はものすごく気になっていた。いつの間に用意していたんだろう? ちょっとヤキモキしてしまう……。
「マキちゃん、心配してんの?」
藤田が俺を見てニッコリ笑った。
「え、そうじゃないけど……やっぱ、気になるし」
俺の答えを聞いて、藤田が嬉しそうな顔をした。
「おせんべにね、メッセージを書いてあげたんだよ」
「せんべい?」
「好きじゃない人には、煎餅あげるんだって、母さんが言ってたんだ。でも、調べてみたら、煎餅をあげるのは、特に意味がないらしいけどね。好きじゃない人には、マシュマロとかハンカチを返すみたいだけど、残るものって俺的に嫌だし、マシュマロは俺が好きだし」
藤田がサラッと言った。
「へえ……で、メッセージって?」
「うーん? 牧野は俺のものだって感じのね」
「そうなんだ……」
俺は、宮坂がその煎餅を見た時の反応を思い浮かべていた。きっと怒りだして、文句を言うんだろうな――でも、ま、良いか。諦めてもらいたいから。
「もう宮坂の話するのやめよ」
藤田が言った。
「そうだな」
その後、放課後に行く店を決めたり、何を買うか考えたりして昼休みを過ごした。
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