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大好きだから 4
授業が終わると、俺達はそそくさと教室を後にした。
「え、こっち行くの?」
学校から駅に向かう商店街に出る時、いつもは大通りを使うのだけど、その日は藤田が遠回りになる細い道に俺を引っ張っていったのだ。
「そ。」
短く答えてから、藤田が俺の手をギュッと握った。
「おい?! 藤田……」
「いいじゃん、誰もいないし。今日だけだよ」
嬉しそうな顔をしながら、藤田が俺をの顔を覗き込んだ。
「まったく……。ま、いいか」
藤田の手をギュッと握り返してから、2人で顔を見合わせて笑った。幸せだよなーって思う瞬間だった。
しばらく呑気に手を繋いで歩いていると、近くの家から派手な男性が出てきた。俺達は慌てて手を離したけど、どうやら少し前から見ていたようで、俺達を見て「イマドキだよなー」と呟く声が聞こえた。
「見られちゃったかな」
俺がそう言うと、藤田が「どう思われたかわからないけど、気にしてもしょうがないよ」と言った。藤田の何にも負けない感じが眩しいと思う。
それから俺達は、駅の反対側にある雑貨屋に行った。
何店か雑貨屋を回って、最後に行った店で、やっと藤田が気に入るキーホルダーがあったので、それを色違いで買うことにしたのだ。俺はセンスないし、特に好み無いから――。
藤田が気に入ったのは、小さな石が何個か輪になった飾りが付いたキーホルダーで、石の一つがハート型だった。俺には似合わない気もするのだけど、でも、藤田が気に入ったのならって感じだ。まあ、部活の仲間には、からかわれるだろうから、見せないようにしないとな。
その後、俺達はラーメンを食べてから、家に帰る事にした。
「なぁ、馨、俺の家にちょっと寄っていかない?」
そのまま帰るのが寂しく思え、俺は電車の中で藤田に聞いた。
「え、良いのかよ? 急に行っても――」
「あぁ、大丈夫だよ。もしかしたら、友達を連れてくるかもって言ってあるから」
「そうなんだ? じゃあ行くよ」
藤田が嬉しそうな顔で俺を見つめていた。ちょっとの時間でも良いから、2人だけになりたかった。とは言え、台所か居間には母親がいるから、何か出来るわけじゃないけど――。
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