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第5話:『親友?何それ食えるの?』

「駄目駄目だめえええ!!俺の一之瀬にエッチなことするの駄目。許可しねぇ!親友の俺だって一之瀬のエッチな所見たことないのに、後輩のお前ぇが何で俺より先に見て良いんだよ。可笑しいじゃんか!」 「え~羽田先輩、何ですかその理論」 相川が唇を尖らせる。 大変可愛らしいが話す内容は可愛さとはかけ離れていた。 「羽田、俺の事でお前の知らない事があっても、別に可笑しくねぇだろ」 「何言ってんだ一之瀬。可笑しいんだよ。お前の事で俺が知らない事があるなんて可笑しいだろ?なぁ。だって俺にとってお前は一番の友達なんだからな。全部知るべきだ」 親友?何だそれ食えるのか? と首をかしげる一之瀬に羽田が絶叫する。 何時も陽気な彼は喜怒哀楽が激しい。 「朝比奈が監査委員に厭らしい事されたいなら俺は止めねぇ。友達と言えど朝比奈の自由だからな。でも、一之瀬お前はダメだ。お前はただの友達じゃねぇ。俺の大親友だからだ。俺の知らない所でそんなの許さねぇ。分かったら黙って頷け一之瀬。」 朝比奈の眉間にピクリと皺が寄る。 あ、怒った。 「発言を撤回しろ。羽田修二。俺は監査委員に劣情の対象にされたいなど思ったことは一度もない。汚らわしい。」 朝比奈が激怒し、相川が「羽田先輩頭おかしい」と監査メンバーと大笑い。 羽田は一之瀬の両肩をつかんで激しく彼を揺さぶっている。 羽田の所為でさらに場はカオスだ。 春日がため息を漏らしたのを五十嵐は視界の端で認める。 「お前らもう良いから黙れ。風紀が乱れる。」 もう誰かとめてと涙目の委員会メンバーをすくったのは春日だ。彼はニッコリと笑顔を浮かべた。 「とりあえず大人しくしてろ。じゃなきゃ、テメェら全員今後一切会議の出席を禁じるぞ」 春日の笑顔に朝比奈と一之瀬は仲良く舌打ちし、無言で書類を書き込む。 相手は年上と言えど上から命令されるのが癪に障るのだろう。 安堵の空気に変わるが、五十嵐は残念でたまらない。 もっと監査委員会に絡まれる二人が見たかった。そして、羽田の暴走が見たかった。勿論、目で見て脳に伝達された情報は速攻で二次元化されている。 あああ、萌える。萌える。現実は萌えの肥やし。 毎回喧嘩する二人を監査委員がお仕置きエッチとかも良い。 羽田の良くわからない奇妙な独占欲もネタにできる。 始めは嫌々なのに鬼畜な監査委員達相手にバックバージン喪失後、快楽を覚えて、その内おねだりとかして、それで、紆余曲折を経て監査委員のメンバーの誰かと恋人になる朝比奈とか、監査委員のエロエロな魔の手から一之瀬を救い出した羽田が真実の愛に気付きハッピーエンドとか都合の良い展開になったりして。 おぉお!!神よ!!! これ凄く良い。 我ながら良い脳内設定だ。 何故ならバッドエンドよりハッピーエンドの方が後味が良いからだ。 彼らの都合なども萌えの前には塵に等しい。 はぁはぁと五十嵐の呼吸は荒くなる。 兄崎が、心配というよりは不気味そうな表情でちらちらと視線を投げてきた。 評議会が終わり、議事録仕上げの為に生徒会室に移動した後も五十嵐は妄想し続けた。しかし、一之瀬と朝比奈のどちらが攻めになるかはいまだ答えは出ない。とりあえず、監査委員メンバーは鬼畜総攻めというどうでも良い設定のみが生まれただけだ。

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