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第5話

ありがとうとおやすみを言われて電話は終わった。 信じられない。 けど、着信履歴にはちゃんと電話番号が残ってる。 ボクはドキドキしながら、 『佐久馬さん』 と文字を入力して、番号を登録してしまっていた。 それから出発の日まで、電話がかかってくる事はなかった。 やがて迎えたイベント当日。 会場が午後からだったので、ボクは午前中に移動して東京に着いていた。 初めてのイベント。 席は真ん中くらいで、いつもテレビ画面越しでしか見た事のない佐久馬さんを見た瞬間はその圧倒的な存在感に背筋がゾクッとした。 やっぱりかっこいい。 やっぱり大きい。 やっぱり素敵なお声。 やっぱり綺麗な目をしてる。 やっぱり……。 イベント中、ボクは泣きそうになりながらずっと佐久馬さんばかり見ていた。 これだけでも十分幸せなのに、この後また佐久馬さんに会えるなんて。 そう思うと胸がザワザワして、苦しいくらいになってしまってた。

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