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第7話

佐久馬さん、タクシーで来るのかな。 なんとなくそんな気がして、ボクは駅に着くとタクシーが乗り降り出来る場所の近くで待っていた。 スマホでSNSを見ていると、佐久馬さんから電話がかかってくる。 待っている場所と服装を告げると、佐久馬さんはボクを見つけてくれた。 黒い帽子に黒いマスクに四角い黒縁のメガネ。 服装も黒で統一して、灰色のスニーカーを履いている佐久馬さんは、先程見た時よりもずっと迫力があった。 「今日はありがと」 佐久馬さんに案内されて、ボクは駅前の個室になっている居酒屋で一緒にご飯を食べる事になった。 「お酒飲める?」 「は、はい……」 普段はあまり飲まないハイボール。 佐久馬さんが頼んでいたから、つい同じでいいですって言ってしまった。 「好きな物飲んでいいんだよ」 優しく話してくれる声。 透明な衝立を挟んで、ボクは佐久馬さんと向かい合って座っていた。 どうしよう。 何を話したらいいのかな。 「明日は何時に帰るの?」 「あ、えっと……」 明後日仕事があるボクは、午後の1番早い飛行機で帰る事にしていた。 「そうなんだ」 それを伝えてすぐ、店員さんがハイボールを持ってきてくれた。 佐久馬さんは身につけていたマスクを外すと、ボクに飲もうかと声をかけてくれる。 「乾杯」 ボクもマスクを外し、佐久馬さんと衝立越しにジョッキを合わせた。 テレビで見るよりも肌の色が白く見える佐久馬さん。 やっぱりかっこよくて、ついついじーっと見てしまってた。 「今日、楽しかった?」 「はい、とても楽しかったです。あっという間でした」 「そっか、良かった。俺も楽しかったよ。お客さんがいる中でイベント出来るのはホントありがたい事だって前から思ってたけど、今の状況になってからますますそう思うようになったんだ」 そう言って、佐久馬さんは衝立越しだけどボクに素敵な笑顔を見せて下さった。 大好きな、佐久馬さんの笑顔。 こんなに近くで見られるなんて、信じられない。 でも、この衝立が、ボクには佐久馬さんとボクの住む世界が違うって教えてくれてる気がした。

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