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第26話
「走って!」
目指すはトレーラーハウス。
号令に鞭打たれ駆け出す。母の命令には背骨で従うようにできている。
最前までののほほんとした雰囲気はどこへやら、母は勇敢に顔を上げ、足元の怪しいキディの肘を持ち連れ去る。
背後にコヨーテの咆哮と蜂の羽音、正気を蝕むビーの哄笑が迫る。
獣臭い息がうなじをなで寿命が縮む。
車がすぐそこに止まっていたのが幸いした。一番乗りはスワロー、二番手はピジョン。
スニーカーになだれこんだ砂に難儀しながら、トレーラーハウスの側壁に手をかける。
「母さん早く!」
「デブケツ持ち上げろ!」
「失礼ね、ダイエットしてるもん!そんな重たくないわよ!」
間一髪母とキディを迎え入れ、蜂とコヨーテの襲来前にスライドドアを叩き閉める。怒り狂った蜂が窓ガラスに体当たりをくりかえす、コヨーテが後ろ脚で立ってしきりと引っ掻く、女王蜂が率いる群れが車を包囲する。
トレーラーハウスはこの場で唯一安全な移動式のシェルターと化す。
「車を出せ、回れ右だ!」
「今やってるわよんもー!」
「クインビーたちがすぐそこまできてるって町の人たちに伝えないと!」
口々に急かされ、運転席にすべりこんだ母がキーを捻る。荒っぽくエンジンを吹かし出発、アクセルを踏み込む。トレーラーハウスが動きだす。キディが取り乱して非難する。
「スヴェンは見殺し!?ほったらかして帰っちまうのかい!?」
「居残ってどーすんだよ、何もできねーだろ」
「キマイライーターは大丈夫、死ぬもんか」
「うちのはただの甲斐性なしだよ!」
「無事を信じて、先に町の人に知らせないと!先回りで皆殺しがビーの目的なんだ!」
くだらない問答をしている時間が惜しい。
自身も心酔する伝説の賞金稼ぎがそう簡単に死ぬはずがないと信じ、熱っぽい頭を働かせるピジョン。
スヴェンらの生死を確認せず出発するのは心苦しいが、女王蜂とその一味が地上に這い出たとあらば、もはや一刻の猶予もない。
まずはロータスタウンに待機している自警団に報告を……
「きゃあっ!?」
「「どわあっ!?」」
車体が激しく揺れる。床が斜めに傾く。一気に荷台の方へ転げ、その反動で今度は運転席へと滑り、スワローとピジョンは咄嗟に背凭れを掴む。
「なにやってんだ、ちゃんと前見て運転しろ!」
「タイヤが嵌まっちゃった……」
「~~ほんっっとろくでもねーことしかしねえアバズレだな、ハメて稼ぐのが仕事の売女がまんまとハメられてどうするよ!?」
「ホールインワンでフォーリンラブしちゃったらどうしようもないじゃない!」
「母さんになんてこと言うんだ、おちゃめなおばかさんって言え!」
「そうよそうよ、もっとオブラートにくるんでマイルドに言って!」
「テメェなんざ運転音痴のアバズレで十分だ!」
「しかたないでしょ、男の人に乗っかる方が得意なんだもん!」
トレーラーハウスの車輪が穴に落ち込んでいる。母がハンドルを切ってアクセルを踏みエンジンを空吹かし、この世の終わりのように絶叫する。ただでさえ夜暗いのに急いでいたのも相まって、進行方向の穴を見落としてたのだ。スワローは脱力し、背凭れに寄りかかってずり落ちる。
胡坐を崩してへたりこみ、深々とため息。
「外に出た途端蜂の的だぜ。コヨーテに食われんのが先かもな」
「がんばって抜け出せないの!?」
「今やってる!応援して!」
進捗、だめそうだ。
母は一生懸命アクセルペダルを踏みこんでいるが、タイヤが上下動して揺れるだけだ。
「くそ……」
弟の隣に座り、思わず下品な悪態を吐く。トレーラーハウスは走る密室からただの密室に降格した。
「町のヤツなんざほっとけ。籠城すりゃ俺たちゃ助かる」
「何時間?何日?食糧はじきに尽きる。その間ずっと我慢比べ?」
「外と連絡とる手段は……ねーか。炭鉱に潜るこたァ伝えたんだ、明け方にゃ自警団が様子見にくんだろ、キディとスヴェンは腐っても街の人間だしよ」
「腐ってもは余計だよ。まあこんな商売してちゃあしょうがないけど」
キディが蓮っ葉に肩を竦める。窶れた横顔にはやけっぱちに荒んだ表情とスヴェンへの未練。
ピジョンは真顔で仕切り直す。
「自警団の人がきて、それでどうする?ビーの餌食になるだけさ。コヨーテと蜂が敵に回ったってどうやって知らせるんだ?」
自警団が一網打尽にされる光景を思い浮かべ、「じゃあどうすりゃいいんだよ!」とスワローがキレる。
町で待機する自警団は、クインビーが危険人物だと知らされてはいても、その企みや能力の詳細まで把握してない。
キマイライーターは言っていた、クインビーの正体は秘匿されていると。
兄が関与してる可能性が高く、当事者の一人といえたスワローにはクインビーの生い立ちを打ち明けたが、スヴェンを除く住民にはパニックを警戒して伏せていたはずだ。
人心操作はそれほど忌避感が強い。彼ならミュータントへの偏見をいたずらに煽るまねはしない、疑心暗鬼による自滅はもっとも避けたい悪手だ。
「宿の親爺に言伝頼んでるって言ってたが、どこまで正確な情報が伝わってるかあやしーもんだぜ」
「カクタスタウンの自警団よりか頼りになりそうだけど」
「ド腐れド底辺と比べてどうするよ?伝言ゲームは行き違いを生むだけだ」
ピジョンはさらに最悪な予想を口にする。
「うかうかやってきて、逆にビーに取り込まれたら……」
「どっちに転んでもジエンドかよ」
ほうっておいても、夜が明ければ自警団がやってくる。
キマイライーターたちが帰ってこなければいずれ怪しみ、捜索隊を組んで女王蜂を狩りだしにかかる。
自警団とビーがはちあわせたら?自警団がビーに取り込まれたら?動物と人の混成軍の一丁上がりだ。車に隠れて見ているしかないピジョンの前で殺し合いを強いられるかもしれない。すっかり虜にされて襲撃を仕向けられるかもしれない。
ピジョンは膝に爪を立て、その痛みで荒れ狂うなにかを懸命におさえこむ。
「家族や恋人だっているだろうに、頭の中ぶっ壊されて、ビーの操り人形にされるんだ……」
「あのガキならテメェの女房やガキに手をかけさせるくれェ平気でやるな」
スワローが同意する。
ビーの悪意は桁外れだ。不特定多数への無差別な憎悪はとどまることをしらず、ロータスタウン全域を飲み込もうとしている。
「車で行っても間に合わない、運よく先越せてもほんの数分じゃ手の打ちようがない」
「地下室に立てこもるとか」
「食糧が尽きるまで隠れて助けを待ち続ける?残された数分で増援呼べればアリかもね」
「町中に話が行き渡るたァ思えねー。かえってパニクるだけだ」
「蜂なら配管や排気口、ドアや屋根の破れ目からもぐりこめる。狭い隙間は危険だ」
「泡食ってお外に逃げ出したらコヨーテが挟み撃ちってか。至れり尽くせりだな」
「蜂の羽音って精神にクるしね。今もブンブン鳴ってる」
「分厚い窓ガラス通して聞こえやがる……メスガキの作戦ならたいしたもんだ、立派に|精神汚染《サイコバグ》だ」
「|蟲《バグ》だけに」
「だれうま」
「外堀から埋めるって表現がぴったりくる。音と気配で何重にも包囲してプレッシャーをかけ続けて、普通の人は発狂まちがいない拷問だよ」
車内で相談している今も、窓には蜂の大群とコヨーテが張り付き、低く濁った羽音の唸りと獰猛な吠え声とで責め立てる。
フロントガラスはびっしりと蜂に埋め尽くされ、横の窓にはコヨーテが群がり、凶悪な牙が生え揃った口腔をかっぴろげる。喉の奥まで丸見えだ。
「くそ忌々しいケダモノどもだね、しっしっ!」
キディが立ち上がってカーテンを引く。
牙や爪がガラスを削り、蜂が当たって弾かれる攻撃的な音だけが暗闇に響く。これはこれで精神的苦痛だ。
あるいはこれこそがビーの狙いか。悪趣味な彼女なら十分ありうることだ。
考えろ、考えるんだ。
ピジョンは目を閉じて彼女の行動をトレースする。打開策をさがせ、突破口を開け。車に閉じこもってるだけじゃジリ貧だ。町の人を見殺しにするのか?肝心のトレーラーハウスは穴に嵌まって進みも戻れもしない、籠城が何日続くかわからない。食料が尽きたら餓死だ。
「詰んでるな」
「ああ……スヴェン……ヘソクリくらい大目に見てやるんだった」
キディが頭を抱え込んで嘆く。昨夜派手な痴話喧嘩をやらかしたらしい。スワローは鼻を鳴らす。
「待ってろって言われたんだろ。しゃしゃりでて尻拭いさせんじゃねーよ」
「わかってるよ……大人しく待ってるのが利口だって、あの人にもさんざ口酸っぱくして言われたんだ。でもどうしても心配で……よくないことが起きてるんじゃないかって。自慢じゃないけど、悪いことにかけちゃ私の勘はピカイチなんだ。全部終わってからモルグでご対面はごめんだよ」
「惚れた弱みか」
「ジッとしてられない性分なのさ、飯こさえながら男の帰りを待ってるタマじゃない。それに……」
キディが一瞬ためらい、気恥ずかしそうに俯く。
「面倒見てる子らに言われたんだ。ガマンするこたないよ姐さん、マジ惚れしてんなら手を放しちゃだめだって……」
『行ってやんな』『あとは任せて』『うじうじ悩んでらしくもない』『バシっとキメてきな』
耳に馴染んだ姦しい嬌声が発破をかける。
野郎はどうでもいいが、この街の[[rb娼婦 > オンナ]]は気のいいヤツばかりだ。
そうして仲間に後押しされたキディは、キマイライーターと死地に発ったスヴェンを追って採石場にのりこんできた。
とことん惚れぬいているのなら、手を放した方が負けだ。
「……テメェから手錠に繋がれたがる物好きがここにもいたか」
「なんだって?」
「こっちの話」
キディがぐすっと洟を啜る。
「馬鹿だねホント、イイ年してさ……いなくなるかもって時になって、初めて心底惚れてるってわかったんだ」
「野郎はしぶてェからちゃっかり生き残ってる」
「気休めはいいよ」
「これが終わったら結婚するんだって言ってたぜ」
「誰と?」
「そりゃテメェを一番愛してる女とだろ」
キディがびっくりして顔を上げる。スワローは耳をほじってよそ見をする。
「何してるの母さん」
「逆襲《リベンジ》よ。耐久かくれんぼは埒あかないでしょ、実力行使で追っ払うの。脳天に風穴ブチ開けてやるわ!」
運転席を離れた母が壁に立てかけたショットガンをとる。スワローは顔を顰める。
「やめとけって、母さんの腕じゃあたんねーよ」
「ドアップじゃない!ゼロ距離で外さないわ!」
「窓開けた途端に蜂が侵入するよ」
「う゛」
「飛んでる蜂を叩っ斬るなんて芸当こなすの爺さんレベルのバケモンだけだ」
「……それもそうね」
二人して諫められ、ショットガンを抱いて口ごもる母。考えが足りなかった。「ラビットハントで磨いた腕前を披露するチャンスだったのに……」としょげている。
そんな母を無視しピジョンは考える。今の自分にできるのは頭を使うことだけ。
ピジョンは根っから慎重で臆病な性分だ、この場のだれより保身にこだわる。
だからこそ見えてくるものがある。
ピジョンは顎に手をあて、弟に鋭く聞く。
「スワロー、蜂の苦手なものって何?キマイライーターから聞いたんだろ」
「発酵酒に寄ってくるって。連中が火と煙を怖がんのは山火事と勘違いするからだとさ、煙を吸い込んだ途端に気ィ失ってバタバタ落ちてくんだ」
「木酢液もよ」
「「木酢液??」」
母が横から口を挟み、兄弟そろって訊き返す。
息子たちの注目を集めた母はえっへんといばり、人さし指を立てて蘊蓄をたれる。
「木材を炭に加工する段階でできる液体よ、酸っぱくてこげくさい匂いがするの。これを軒下に塗っておくと蜂がこないのよ。ほら、前にトレーラーハウスに蜂が巣を作ったでしょ?あの時買ったスプレーが残ってたはず」
「主婦の知恵だね」
木酢液と発酵酒。手札はある。
動物は本能で火を怖がる、ビーに操られていてもそれは同じだ。
「普通の蜂と同じやりかたで追っ払えるかわかんないけど……」
「なあ、妙だぜ」
「妙って?」
「いくらなんでも追い付くのが早すぎだ。コヨーテが本気出したならイケなくもねェが、あのアマはどんなトリック使ったんだ?ガキの足で曲がりくねった長距離歩き抜いたのか」
「トリックって……またコヨーテに乗ってきたんじゃないの」
「ひとりのっけて走るぶん遅れる。同着はムリだ」
言われてみればその通り、スワローの疑問は正しい。事実ピジョンと追いかけっこしていた時、クイーンビーは最後尾のコヨーテから降りてきた。
しかも「あの」キマイライーターじきじきに足止めを担ったのだ。仮にビーが仕掛けたトラップが発動するかしても、こんなに早く地上にでてこれるのはおかしい。計算が合わない。
スワローは勘所がいい。見過ごしていた矛盾点を突かれ、考えを纏めようとコートのポケットからしけった地図を引っ張り出し丁寧に開いていく。
「あれ?」
「どうした」
「涎で読めなかったけど……何箇所か変なマークが」
ピジョンが指さすほうを身を乗り出してのぞきこみ、スワローが眉をひそめる。セピアの地図に打たれた鉛筆のマル印。コヨーテの蹂躙は別としても、随分と年代物で使い古されている。
「ここで働いてたヤツの忘れもんだとさ。宿の親爺がとっといたんだ」
「ということは、中で使うんだ」
労働者の忘れ物。その言葉がひっかかる。
おもむろに立ち上がり、カーテンの端を少し捲る。コヨーテのドアップにびびるも、視線をさらに向こう、夜闇に包まれて静まり返った採石場へと投げる。
不自然なまでに穴だらけの採石場。
埋め立てもせず放置された杜撰なあばた……まるで蜂の巣。
「ビーの話覚えてる?」
「どれの事だよ」
「この土地に伝わるインディアンの話。|女王蜂の《クインビーイン》|地下帝国《アンダーグラウンド》」
『それからというもの岩山で怪我する人や死ぬ人がいると、その血が山肌に沁み込んで彼女に送られる。どんなお花の蜜よりなお甘い、新鮮な人間の血が……』
山の岩肌にしみこみ、地下に送られる血。この荒唐無稽な言い伝えに隠された真実は……
「地下水脈だ」
「はァ?」
ピジョンが指を弾く。スワローが頓狂な声を上げる。キディと母が顔を見合わせ膝でにじりよる。
ピジョンは全員によく見えるよう床に地図を広げ、鉛筆マークを指で叩いて教え諭す。
「こことこことここ、何箇所かしるしがある。コレたぶん資材運搬用の縦穴か飲用水の井戸の場所だよ、坑夫の生命線だ」
「どうしてわかんだよ」
「採石場は穴ぼこだらけだ。おかしいだろ?何のために掘りまくったんだ。坑道は地下深く広がっている、事故が起きたら働いてる人は生き埋めだ。道が土砂で塞がれて帰れないならどうする?」
「えーと……抜け道を作る?」
「正解」
母の回答を褒め、涎がしみてほぼ判読不能の地図の、わずかに読み取れる丸じるしに目を凝らす。
「俺の勘が正しいなら、複数の地点に緊急避難用の脱出通路が用意されてる。複雑に入り組んだ坑道を行くより直線で地上へ抜けたほうがずっと早い、資材も縦穴から下ろした方がはるかに楽ちんだ。空気穴の役割も兼ねてたろうね」
採石場に散った無数の穴の正体は資材運搬用の縦穴および涸れ井戸だった。
そのうち何個かは緊急避難路として坑道と繋がっている。梯子かロープか、簡易式のリフトを使って垂直に移動するのだ。各地の坑道に見られる仕掛けでもある。
スワローの眼光がにわかに真剣味を帯びる。
「クインビーはコイツを使ったのか」
「多分……土砂崩れで入口が埋まった時、激しい揺れがきたろ?砂煙で視界が覆われて方向感覚を失った」
「そこに付け込んだワケか」
「ここは掘り過ぎだけどね。俺でもわかるよ、工事計画が杜撰だ」
「コヨーテは濡れ衣で、地盤が弱くなって事故が起きまくったのが閉鎖の理由かもな」
「そうなの?可哀想……」
「現場監督が責任を問われるから、コヨーテを悪者にしてトンズラこいたってわけかい。ただの噂をすっかり信じ込んで馬鹿だね私」
母とキディがコヨーテに同情する。ピジョンは集中して記憶を巻き戻す。
クインビーの声はすぐ後ろから聞こえた。本来ならあの時点で怪しむべきだった。瞬間移動が使えないなら、入り口に向き合ったピジョンの背後にまわりこむのは物理的に不可能だ。
兄と同じ結論に行き着いたスワローが不機嫌に唸る。
「ちゃちなトリック。けど効果バツグンだ」
「突然の土砂崩れでみんなビビってた。そこに畳みかけたんだ」
ビーの唐突な出現が示す通り、採石場稼働時の井戸や資材運搬用の縦穴は完全には密閉されてない。女王蜂は決して万能でも全能でもない、そう見せかけるのが巧みなだけだ。いうなれば小賢しい子どもの発想だ。
反撃の目はある。
俺達はまだ負けてない。
けっして媚薬のせいじゃない、女王蜂に一杯食わせられるかもしれない高揚によって体が熱く火照りだす。全身を巡る血が滾りたち、くしゃりと地図を握り締める。
ピジョンはまだ諦めてない。
ここにいる全員で生き残る未来を、クインビーへの復讐を、彼女に|ヴィクテム《ツケ》を払わせる決意を。
賞金稼ぎになりたいのはスワローだけじゃない。
「聞いて。作戦がある」
「作戦?」
スワローが気色ばむ。ピジョンは皆を呼び寄せ、よく練ったアイディアを打ち明ける。
「無茶よ!」
「危険すぎる!」
母とキディが難色を示し、スワローは神妙な目の色でだまりこむ。勝算を吟味しているのだ。
「母さんたちの心配はわかる、けどもうコレしかない。それともずっとひきこもってる?車は動けない、街に行けない、もうどうしようもない。俺達だけでなんとかするしかないんだ」
「キマイライーターが帰ってくるまで待ちましょ」
「どんな状態かもわからないのに?大怪我して動けないかもしれない、必ず合流できる保証もない。考えたくないけど、最悪のコトだってありうる。俺達はまだ動ける、手と足がちゃんと付いてる。だったら最後まであがききろうよ」
絶体絶命、孤立無援、四面楚歌。
そんな状況下において、ピジョンはむしろ生き生きと精気を甦らせている。弱気がぶり返すキディを諭し、心配顔の母を宥め、リーダーシップを発揮して女性陣を纏め上げていく。スワローは兄の変貌を化かされた心地で見詰めている。
「やっぱりダメ、行かせられない」
「母さん……」
「あなたたちにそんな危険なことさせられない、絶対ダメ!」
母が駄々をこねて首を振る。
ピジョンの首ったまに抱き付き、もう片方の腕でスワローを抱き寄せ、もうとっくに自分の身長を追い越した息子たちに切々と訴える。
「三年前もそうよ、あの時も間に合わなかった、全部終わってから知ったのよ。またのけ者にするの?子どもの一大事に何もできないのはもうウンザリ、今日だってそう、スワローが飛び出したとき咄嗟に動けなくって……ピジョンが後を追ってった時も、馬鹿みたいに口を開けてボーッと見てるだけ。ピジョンじゃなくて私が行けばよかった、追っかければよかったのにそうしなかった。ネグリジェが汚れたって知るもんですか、お化粧なんてどうでもいいわ、世界でいちばん大切な息子たちが酷い目にあってるのにベッドを出れない母親なんて最低よ!!」
「体が辛かったんだろ?しょうがないよ」
「そんなの言い訳よ、体のだるさなんてなによ、いつものことだわ。ピジョンがスワローの面倒見てくれるから甘え倒して、スワローはなんでもできるからほったらかして、ママらしいことなんにもできてなくて……」
母は訥々と自分を責める。堰を切ったように溢れ出す言葉の奔流が、こみ上げる激情の熱がピジョンとスワローを圧倒する。
母はダメな人だ。
それはそうかもしれない。
常飲するピルの副作用で常に体がダルく、最近ではベッドから起き上がり最低限の家事をこなすだけでぐったり疲れきってしまうとしても、そのせいでろくに外出すらままならないとしても、彼女がもう少し早く弁解していればスワローの家出は防げたし、ピジョンだって弟を追って坑道に迷い込まずにすんだ。
彼女のすることは、いつもすこしだけ遅い。
彼女のいうことは、いつもすこしずれている。
「行かないで」
今にも崩れ落ちそうに取り縋る母を、ピジョンがやんわり押し返す。
「大丈夫。スワローがいるから」
「兄貴も一緒だ」
絡み付く腕をふりほどき、真っ直ぐに母を見詰めて宣言。
スワローはピジョンを選び、ピジョンはスワローを選んだ。
特別な絆で結ばれた兄弟の間にはだれも入れない、たとえそれが母親でもだ。
母がしょぼんと肩を落とす。随分と小さくなった。一回り萎んだ気さえする。
ずっとずっと、子供の頃からずっと、川の字に憧れていた。
親子仲良く並んで寝るのが彼女のささやかな夢だった。
「もう……川の字はしてくれないのね……」
お腹を痛めて産んだ子供たちは大きくなり、ふたりで歩いていこうとしている。
それを止める権利は彼女にない。
邪魔する資格もない。
一人で川の字はできない。三人そろわねば成立しない。
最愛の息子たちに挟まれて寝る至福の時間……彼女が生き甲斐を感じられる貴重な瞬間は、もう永遠に過去のものだ。
夜の帳に覆われ、カーテンを引いた二重の暗闇の中でも、よくよく注意して見れば目尻の小皺が透けている。
近くにいすぎて気付かなかったが若い頃と比べたら髪の艶も褪せ始めている。
どちらかともなく母に近寄り、スワローは右肩に、ピジョンは左肩にさりげなく手をおく。
「無事に切り抜けたら賞金稼ぎになるの認めてほしい」
「息子の旅立ち、祝ってくれよ」
いざ巣立ちの時だ。
ごく自然な動作で母の頬に頬を付け、二人で挟んでキスをする。
ピジョンとスワローの真ん中には常に母がいた。彼らは常に川の字だった。
だけどもう、川の字で寝る季節はとうにすぎた。
ピジョンとスワローは大きく成長し、子供時代の終わりにささしかかっている。
深呼吸で覚悟を決めた母が、しっかりとショットガンを抱え直し、最高の笑顔で息子たちを送り出す。
「いってらっしゃい」
しなやかで、気丈で。
底抜けに打たれ強くて。
一晩で何歳も老け込んだような憔悴の影を纏わせても、二人を見守り育んできた愛情だけは損なうことなく、涙で潤んだ目をまぶたが抱きしめる。
これまでの人生で見た中で、最も美しい母の笑顔だ。
二人の行動は早い。
車内を漁って必要なものをかき集め、スライドドアを勢い開け放ってハイタッチ。
「死ぬなよ」
「そっちこそ」
敵がすかさず乗り込もうとするも予め控えたキディがフライパンでコヨーテを強打、母が皿をぶん投げる。
「とってこい!」
空高く長大な放物線を描く皿をコヨーテが仰ぎ見る。母とキディが即座にドアを閉めるのと入れ替わり、コヨーテの頭を飛び越えて着地するピジョンとコヨーテの頭を踏み台にして更にジャンプするスワロー。
フロントガラスの蜂がやってくるのに先んじ、二手に分かれて走り出す。
既に打ち合わせ済みだ。やることは決まってる。
追いかけてくるコヨーテと蜂を自慢の俊足で十分引き付けておいてから、スワローは缶ビールのプルトップを引く。
「たんと飲め!」
口に含んだそれを霧状に吹き付ける。効果はすぐにあらわれた。飛行の軌道がめちゃくちゃに狂い、酔っ払って蛇行する。
舌の上に一滴たらし、空き缶を放り投げる。
「ベッドの下に隠しといて助かった」
さらに走る。コヨーテが追い縋る。
坑道の恨みを忘れてないのか、今にも飛びかからんと前傾姿勢に移るコヨーテを振り返る。
「俺ぁアイツと違って優しくねーかんな」
コイツらはよってたかってピジョンを嬲り者にした。
ビーのフェロモンのせいだろうがなんだろうが許す道理はねえ。
お優しいお兄サマはできるだけ傷付けないようにとかほざいてやがったが、知ったことか。
「他人のライターなら惜しかねェ」
スタジャンの懐、スヴェンからパクったライターで煙草に着火。
鼻面に煙をくらったコヨーテがたじろぐ一瞬の隙を逃がさず、底部を開けてライターオイルを派手にぶちまける。
すぐそばに迫ったコヨーテが強烈な臭気のオイルにギャンと啼く、数匹は目をヤられたようだ。
狙い通りだ。
「レッツパーリナイッ!」
スワローは残忍に笑い、橙の放物線を描いてライターを群れに投じる。
乾いた毛皮にオイルを染ませた獣が激しく炎上、逃げ惑う仲間にも煌々と燃え広がっていく。
「仇はとったぜ」
美しい星空の下、色香さえ匂い立たせる綺麗な顔を火影の戦化粧が隈取る。
タンパク質が燃える甘ったるく濃厚な臭気があたりに立ちこめ、風に吹き流されてピジョンのもとまで届く。
「アイツ無茶苦茶だ……!」
火だるまと化し暴れ狂うコヨーテを遠目に確認、ピジョンが戦々恐々とする。
「頼むから打ち合わせ通りにやってくれよ」
彼とて丸腰なわけじゃない。自分の脚で可能な範囲まで、トレーラーハウスからできるだけコヨーテと蜂を引き離す。
雲霞のように膨れた蜂が頭上に展開するのを見、ガスマスクを引き下げ臨戦体制に移行。
母から借りた木酢液スプレーを円を描いて全方位噴射、凶悪に針ふりかざした蜂が一斉に遠のく。
強烈な臭気から目鼻の粘膜を守るマスクに感謝。念のためモッズコートにも吹きかけておいて助かった。
蜂が迫るたびスプレーを吹きかけピジョンは逃げる。この調子で使い続ければじきに尽きる。体の奥を異物が抉るが、意志の力で無視して懸命に足を蹴り出す。火事場の馬鹿力という言葉があるが、今のピジョンがまさにそれだ。絶体絶命の危機に直面し、脳のリミッターが一時的に解除され、本来の自分以上の力が発揮される。
ピジョンに襲いかかろうとしたコヨーテが、鼻面にスプレー噴射を受けて悶え苦しむ。
「やっぱり犬の仲間だ」
犬との混血で嗅覚の過敏なコヨーテにも一定の効果が見込めると睨んだとおりだ。コイツの匂いはキツイ。
けれど所詮は時間稼ぎ、数で押してこられちゃたちうちできない。
ピジョンの強みは土地勘だ。採石場で模擬戦をくり返した日々を思い出せ、落とし穴の位置を正確に思い描け。
採石場に点在するすり鉢状の穴を跳び越え、わざとジグザグに走る。スプレーの目潰しをくらったコヨーテが何匹か転げ落ち、何匹かはよろけて振り落とされる。スワローとキマイライーターに貰ったダメージが効いているのだ。
錆びた重機が打ち捨てられたクレーターだらけの採石場を突っ切り、なだらかな砂丘を駆け上る。
「くらえ!」
スリングショットの使用時は風向きを読むのが重要だ。ピジョンは風を味方にするのに長けている。
盛大に砂を蹴飛ばす。風下のコヨーテが砂煙に攪乱されるのを尻目に、ガスマスクで視界を守ったピジョンは悠々と先を急ぐ。それにしても蜂が多い。アレ全部ビーが生んだのか?女王物質は女王蜂に特有のフェロモンだ。ということは、野生の蜂が合流したのか……ピジョンの予想が正しければ、ビーの軍勢はこれから何倍何十倍に膨れ上がる。
それこそロータスタウンを覆い尽くすほどに。
自然界の眷属すら取り込んでハーレムをなす、女王蜂の暴走だ。
「!?あっ、」
足が縺れて砂丘を滑り落ちる。丸まって減速、衝撃を和らげて立ち上がる。
夜空にこだまする無邪気な笑い声……ビーが近くにきてる。神経が焼き切れる。隠れる場所をさがして顔を巡らすピジョンの鼓膜が、ほんの僅かな音をとらえる。
断続的に響く、固い金属の衝突音。やけにこもって聞こえる。
「まさか」
擦り傷だらけのピジョンは「音」の方角へ足を進める。殺気だった遠吠えの合間に、暗闇を縫って伝ってくる希望の鐘声。辿り着いたのは地獄の釜のような、一際大きく深い穴だ。小さめの隕石が落ちたと言われてれば信じてしまいそうだ。
意を決し、靴裏で砂の飛沫をとばし斜面を滑り下りる。
モッズコートがうるさくはためき髪が後ろになびく。
滑り落ちると表現したほうが事実に即しているがとにもかくにも底へ到着、音源へ接近。
「おいかけっこはおしまいね」
二度と聞きたくない声。恐怖のかたまりが喉に詰まる。穴のぐるりを囲むよう勢ぞろいし居並ぶコヨーテ、月を背にした一頭にクインビーが優雅に横座りしている。
「ピジョン!」
兄が逃げる方角を確認、しゃにむに追ってきたスワローが颯爽と斜面を滑走、スタジャンを翻しあざやかに着地を決める。
奈落の底で合流したピジョンとスワローは並び立ち、クインビーを睨み据える。
「まるでコロッセオね。悪くない趣向だわ」
穴の中では声が妙にこごもって反響する。クインビーは相変わらず愛らしい微笑みをくずさず、長い睫毛が縁取る目を嗜虐的に細め、絶望のどん底で孤立する兄弟を見比べる。
ピジョンは生唾を呑む。
「どうして俺を操らなかった、そのほうが簡単なのに」
「反応がないと興ざめでしょ?ビーのチカラで従わせるのは簡単だけど、ちゃんとよがってくれなきゃヤル気がでないわ。お兄さんの泣き顔、とってもそそったわよ」
お嬢様気取りで澄ました口調が、やや蓮っ葉で砕けたものへと変化する。ビーが唇に指を添えてほくそえみ、ピジョンは体の脇で手を握り込み屈辱に耐える。
兄の言葉の続きをスワローが受け取る。
「テメェが一躍有名人になったパレードのこと、聞いてもいいか」
「ああ、アレね……」
ビーがふっと遠くを見る目をし、髪を一房指に巻き付けてもてあそぶ。
「アレもおもしれーからやったのか」
「そうね。どうかしら。あの頃はまだビーも世間知らずの女の子で、力をコントロールできなかったの。研究所から逃げ出したものの行くあてがなくって……ある日ポスターを見たの。そこに知ってる顔があったわ。研究所に視察に訪れた偉い人……ビーにやさしくしてくれたおじさん。戦争が終わっても、研究を引き継いで続けてる機関はたくさんある。ビーはそこで生まれたの。女王物質を再現する実験の成功例……大人は口々に褒めそやしたわ。ビーはまだ子どもで、その時は意味がわからなかった。ビーのお腹には特別な臓器があって、そこでジョオウブッシツが精製されると、なんでも言うことを聞かせられるのですって」
ビーは何かに憑かれたよう饒舌に話す。
過去に遡って熱に浮かされた口調は、哀しい狂気を秘めていた。
自分を乗せたコヨーテをやさしくなでて、ビーは俯く。
「来る日も来る日もジッケン、ジッケンよ。交尾のジッケンがいちばんいやだった。ビーと同じ、虫のキメラのひとと無理矢理番いにさせられて……成功例はビーだけだけど、失敗作はたくさんいたの。女王蜂は卵を産むのがお仕事。だからね、蜂の遺伝子を組み込んだ男のひとが毎日『提供』されたの。そうして経過を見るのですって」
『女王蜂の腹の中には精子を貯えておける特殊な袋があり、一度交尾すると長期間産卵し続けることが可能じゃ』
「ビーは大人になれない。遺伝子をいじくった|後遺症《ヴィクテム》で成長が阻害される。このカラダは第二次性徴をむかえない。それでも受精と妊娠は可能かどうか、ずっとジッケンされたの。蜂だけじゃないわ、人間の男のひとでも……ビーの遺伝子の半分はヒトだから、受精は可能かどうか。可能ならどんな個体が生まれるか……」
『……が、老化や怪我で繁殖できなくなった女王蜂は、それまで顎で使ってきた働き蜂によって巣の外に捨てられる。幼虫のときから餌を与えられてきた女王蜂に餌を獲得する能力などあるはずもなく、哀れ飢死する運命が待っておる……』
「もし可能なら……次の『成功例』にバトンタッチできるでしょ?」
もっと優秀で、もっと完璧な成功例。
今度はちゃんと成長する、大人になれる成功例……
ピジョンの顔色が悪い。今にも倒れそうだ。ビーの残酷な生い立ちを聞かされ、心をひどくかき乱されている。
ビーの話が真実なら、彼女はずっと大人のオモチャとして扱われてきた。
蜂とヒトのキメラとして生を享け、おなじく蜂の遺伝子を組み込んだオスや、おそらくは研究所の大人たちに性的虐待をうけてきた。
「研究成果が目的なら体外受精で十分なのに……そんなにビーと遊びたかったのかしら」
月明りに澄んだ琥珀の瞳はただただ空っぽで、はてしない虚無だけが広がっている。
さりげなく兄を庇い前に出て、スワローが促す。
「その復讐でパレードをめちゃくちゃにしたのか?」
「ポスターを見て知ったの。研究所にきてたおじさんが偉い人で、市長に当選したパレードをするって……だからね、お祝いを言いにいったの。ビーに会えば喜ぶと思って……ああ、まさかあんなことになるなんて。とってもとっても哀しいわ!ビーのせいでおかしくなった人たちがリムジンを襲撃して、可哀想におじさんはなぶり殺し!たくさん蹴られて殴られて……体中蜂さんに刺されたみたいにボコボコよ」
ビーがはしゃいで言い放ち、女王蜂の権能を誇るよう両手を広げる。見開かれた目は異様な輝きを取り戻し、唇が喜悦に歪む。スワローが苛立たしげに砂を蹴る。
「……レイヴンの野郎と同じだな。お門違いの仕返しだ。テメェらはそうやって|犠牲者《ヴィクテム》を量産するんだ」
三年前の男の顔が脳裏を過ぎる。
ピジョンにしたことは嘗てビーがされたことだ。
限りない憎悪の連鎖、尽きせぬ悪意の循環。
何か口走りかけた兄を片手で制し、スワローは女王蜂と対峙する。
「ネタは割れてんぜ。土砂崩れはただのハッタリ、しょうもねえコケオドシ。縦穴を使ってショートカットしたんだろ、せこいっての」
「あらら、バレちゃった。でも驚いたでしょ?」
「子どもの足でここまで来れるわきゃねーかんな。ズルしたってピンときた」
「迷路をぐるぐるさまようより穴をのぼったほうがずっと早いもの」
ビーは一家が来る以前から採石場に潜伏していた。コヨーテを使った下見はばっちりだ。採石場の穴の正体にも当然気付いていた。ピジョンとスワローは背中合わせに追い詰められる。
「……どうする?」
「もうちょっと引きのばすんだ」
スワローの影でポケットに手を突っ込み、愛用のスリングショットを握る。死角からビーに狙い定めてコイツを放てば……
それは突然訪れた。
「う」
ドクン、心臓が跳ねる。体に異常が起きる。スリングショットを持ったまま蹲るピジョン、片手で胸をかきむしり悶絶する。兄の異変にスワローは動揺する。
「こんな時にふざけて……」
「お話はおしまい。最後の仕上げにかかりましょ」
コヨーテから飛び下りたビーが、この上なくご機嫌に指を振って踊りだす。
黒と黄の髪が艶やかになびくのを追って、穴の上空に展開した蜂が右回りに渦を巻く。
「コロッセオに身を投じたらやることは決まってる」
コートの胸を掴み、ピジョンがゆっくりと上体を起こす。その表情は前髪に隠れてしかと窺い知れないが、全身から異様な気配が滲み出ている。
前髪がはらりと乱れ、目を血走らせた狂気の相が暴かれる。
「テメェ……」
フェロモンが廻りきった。
完全にクインビーの手に堕ちた。
ピジョンが小石を拾ってスリングショットを構え、あとじさるスワローに狙いを絞る。
女王蜂の命令は絶対。
兄は既に脳内の快楽物質に体のすみずみまで明け渡している。
ビーの唇が邪悪に裂け、月を仰いで連鎖するコヨーテの遠吠えが死闘の開幕を告げる。
「ふたり仲良く殺しあってちょうだいな」
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