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第5話稔★(愛人注意)
翌日。
オミとアルのふたりを実家に送り届けた後、俺は別で借りているマンションに向かった。
あの後、オミは夕食を食べるのを嫌がったうえ、アルに構われるのも嫌がりさっさと部屋に引きこもってしまった。
何も知らないアルは首を傾げていたが、俺が説明するわけにもいかず黙って知らん顔した。
必要あれば、オミが説明するだろう。
とりあえず、ふたりを義父母の元に送り届けたし、俺がすることはひとつだ。
一時に稔が来る。
それまでに俺は、別宅でライターとしての仕事をして過ごし時間が過ぎていくのを待った。
午後になり、煙草を吸っていると玄関が開く音がした。
時刻を確認すると十二時半。
一時、と言っていたが、だいぶ早く仕事を抜け出してきたらしい。
俺は、煙草を灰皿に押し付け、椅子から立ち上がり振り返ると、ちょうど稔がこのリビングに入ってきた。
「リンさ……」
俺は、稔の肩を掴みドアに押し付けると、俺の名前を紡ごうとした唇を塞いだ。
稔の股の間に太ももを入れ、口の中を舐め回すと彼は俺の背中に手を回し、自分から口を開き舌を出す。
早く抱きたい。
限界だと言うまで泣かせて……中をぐちゃぐちゃにしてやりたい。
唇を離すと、稔は吐息を漏らしうっとりと俺を見つめた。
「稔、発情期のオメガみたいな顔だね。お前は、アルファなのに」
「あ……リン、さ……」
俺は、稔の顎を掴み微笑んで言った。
「ほら、お風呂で顔見ながらやろうか? 今日は俺、早くヤりたくて仕方ないんだ」
それを聞き、稔はまつ毛を震わせごくり、と喉を鳴らした。
風呂には大きな鏡がある。
曇らないようにコーティングしてあるので、シャワーを出していてもそうそう曇ることがない。
その鏡に、湯船に手をつき頬を上気させて喘ぐ稔の顔が映る。
腹の中を綺麗にしたあと、俺は稔の中に指を入れ、前立腺を刺激し続けていた。
イくほどではない、やわやわと優しくそこをなで続けているため、稔は先ほどから、
「イきたい……」
と、何度も口にしている。
稔はアルファだ。
本来、ここはペニスを受け入れるようにできていないため時間をかけて解さないと彼を傷つけてしまう。
だから時間をかけて解しているのに、稔は耐え切れないのか、ペニスに手を伸ばそうとするのでそのたびに俺は、その手をそっと、止めていた。
「稔、もう少し我慢しなよ? 自分で扱いてイきたいわけじゃ、ないでしょ?」
そう声をかけると、鏡の中の稔は涙目になり、首を横に振って喘いだ。
「んン……リン……さん……」
稔と俺はよく似ている。 違うのは、身長と髪色と、纏う雰囲気だけだと言われるほど似ていた。
兄弟に間違われることなどしょっちゅうだし、町を歩いていて互いの知り合いに声をかけられるのも珍しくなかった。
そんな相手とセックスしている状況はかなり倒錯していると自分でも思う。
しかも稔はアルファで、本来征服する側になる人間だ。
そんな相手を組み敷き、喘がせていることに奇妙な優越感を覚え、もっと啼かせたいと思ってしまう。
だから俺は、稔を縛って抱くことが多かった。
懇願するまで挿れないこともしょっちゅうだし、今みたいにイけないようにわざと肝心な場所を刺激せずにいるのもいつもの事だ。
「あはは、稔、本当に発情したオメガみたいだ。稔のここ、物欲しそうにひくひくしてるけど?」
「う、あ……だって……早く欲しい、からぁ……」
言いながら稔は腰を揺らし、鏡越しに俺を見つめた。
俺としても早く抱きたくて、早く啼かせたくて仕方ないのに、いざ稔を目の前にするといつものように限界まで我慢させたくなってしまう。
被虐嗜好、とでもいえばいいんだろうか。
稔は俺の被虐的な部分を刺激してくる。
「今日は一回で終わらせるつもりはないから。ねえ稔。時間いっぱいまで、抱いてあげる」
「リン……さん……」
今日、稔がどれだけ時間があるかなんて聞いていないけれど、きっと彼は俺が飽きるまで抱かれるだろう。
俺は指を引き抜くと、ゴムをつけず一気に彼の身体を貫いた。
「あぁ!」
稔が天井を仰ぎ見て、びくん、と身体を震わせる。
「稔、挿れただけでイったの? ほんと、君は可愛いよね。俺に抱かれながら、何を考えてるの?」
「う、あ……」
稔にはちゃんと番になる予定のオメガがいる。なのに彼はその相手に何もできず、その葛藤を俺と関係を持つことで解消している。
しょせんお互い身代わりでしかない。
それを承知でこの関係を何年も続けていた。
一度浅いところまで引き抜き、前立腺を重点的に攻めたてると、稔はとめどなく喘ぎ声を漏らし、おかしくなる、と繰り返した。
「おかしくなっちゃいなよ、稔。そうなりたいから、俺の所に来てるんでしょ?」
「あ……リン、さん……中は……」
「何、中に出してほしくないの? こんなに俺のペニスを締め付けて離さないのに? 稔、奥に出されるの大好きでしょ」
笑いながら言い、俺は最奥を突き立てる。すると、稔の膝ががくがくと震え、呻きながらびくびくとペニスから精液を吐き出した。
「もうイっちゃったの? もったいないなあ。ねえ稔、根元、縛っちゃおうか? それともブジー挿れる?」
「ふ、あ……あ……リン、さ……イってる……イってる、かるらぁ……!」
そんな叫びを無視して、俺は奥を突き立て中に精液を吐き出した。
一度出しただけでは足りない。このどうしようもない感情は、これだけでは解消されない。
頭の中にあるのは昨日見た、オミの喘ぐ姿だ。その姿を稔に重ねながら俺は、ぐったりとする稔の身体を抱き上げると、虚ろに開いた唇に口づけた。
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