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第一章・4

「え!? 天羽くん、もう高校卒業してるの!?」 「うん。実は、他校をこの春で」  国内でも有名な学校の名を聞き、宇実は二度驚いた。 「海外の大学に内定してるんだけど、あちらの入学は秋なんだ」 「外国、かぁ。すごいね」  オメガとは言え努力を重ね、成績は学年でトップクラスの宇実も、これには唸った。 (上には上がいる、か)  そしてやはり。 「天羽くんは、もしかしてアルファ?」 「うん。よく解ったね」 「解るよ……」  精悍な顔立ちだけでなく、その体躯もがっしりとした要だ。  身長は、きっと180cmくらいあるだろう。  並んで歩く二人だが、宇実の影は要よりずいぶん小さかった。 (僕がオメガだと知ると、天羽くんは傍から去って行くかもしれない)  学校のアルファやベータには、露骨にオメガの宇実を下に見て嫌う生徒がいる。  要を試すつもりもあって、宇実は自分の第二性を打ち明けた。 「僕は、オメガ。小さいから、解るよね」 「そう。でも人間は、第二性だけじゃ測れないから」  だから、気にすることは無い、と要は言う。 「清水くんは、親切でいい人だよ。こうして私を、学校まで案内してくれるんだから」 「ありがとう」  宇実は、ホッとしていた。 (天羽くんは、差別をしない人なんだ)  それだけで、目の前が明るくなった。

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