6 / 94

第二章 指切りげんまん

「天羽 要です。よろしく」 「天羽くんは、秋に海外の大学に進学する前に、本校に体験入学することとなりました」  担任の教師にそう紹介を受けた、要。  彼が軽く会釈をすると、宇実は拍手をした。  自然に拍手でいっぱいになった教室の、一番後ろに要は座った。 (天羽くんと、同じクラスになれたなんて!)  朝の電車で知り合った、友達。  宇実は、素直にその偶然を喜んだ。  ちらりと後ろをうかがうと、要は小さく手を振っている。  その姿に、宇実の頬は熱くなった。  痴漢から救ってくれた時の、凛々しい要。  そして今、親し気に手を振ってくれる、優しい要。  どちらの彼も、好きだ。 (好き!?)  自分の心に浮かんだ言葉に、宇実は動揺した。 (好き、とか!? 無い無い! さっき出会ったばかりなのに!)  両手で頬を挟むようにして、軽く叩く。 (それに、僕には恋なんてしてる暇は無いんだから)  しゃんと背を伸ばしテキストを開いたが、それでも後ろが気になってしまう宇実だった。

ともだちにシェアしよう!