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第二章・5
ひとしきり話し終え、宇実はお茶を一口飲んで身を乗り出した。
「さ、今度は天羽くんの番。どうして、この学校に体験入学なんかしたのさ?」
「うん。それはね……」
残念ながら、要が口を開きかけた時に予鈴が鳴った。
「あ、チャイム」
「じゃあ、清水くん。話しは放課後にするよ」
実は、と要はいたずらっぽく笑った。
「実は、道草、というものを体験してみたいんだ」
「道草?」
「放課後に、どこかに寄ってティータイムを楽しみたい」
「無邪気だなあ」
いいよ、と宇実も笑顔を返した。
「僕、時々寄るカフェがあるんだ。そこに行こう」
「ありがとう!」
では、と要は手を前に差し出した。
小指を伸ばし、要の指に絡ませた。
「約束。指切りげんまん」
「え!? あ、うん。約束」
微笑む要の顔は、本当に無邪気そのものだ。
(指切りなんて、久しぶり)
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます」
「指切った!」
まるで小学生のように、歌まで口ずさんだ。
離しても、小指はほんのり温かかった。
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