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第三章 名前
放課後、宇実は要を伴って駅近くのカフェを訪れた。
採光のいい、明るいフロアには、曲線を持ったテーブルが並んでいる。
色も形も様々な椅子の一つに、彼らは掛けた。
「僕は、紅茶にしよう」
「じゃあ、私も同じものを。茶葉は何? ニルギリ? ディンブラ?」
「え? えっと……、知らない」
「ごめん。変なこと訊いて」
要は、照れ臭そうに笑った。
「こういう、世間知らずなところを埋めるために、私はごく普通の公立高校に通うことにしたんだ」
いずれ私も、家業を継ぐ。
「上に立つ者は、現場にいる人間のことを知らなきゃならない、って思って」
「偉いなあ」
でも、と宇実は運ばれてきた紅茶のカップを手にしながら、要に問うた。
「でも、なぜこんな地方に? もっと大きな街にも、公立高校はあるよ?」
それはね、と要もカップを手にした。
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