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第三章・3

「じゃあ、清水くん。私のことは、名前で呼んでくれるかな」  天羽くん、ではなく。  要くん、と。 「何なら、要、でもいいよ」 「そんな。一歳だけど、年上なんだから」  要さん、と宇実は呼んだ。 「要さん」 「新鮮だ……!」  お母さまや、お姉さま以外の人に、そう呼ばれるなんて! 「感激ばかりしてないで。僕のことも、宇実とでも呼んでよ」 「申し訳ないな。宇実くん、ではどうだい?」 「くすぐったいよ。他の友達はみんな、宇実って呼ぶよ?」  じゃあ、と要は息を吸って丁寧に声にした。 「宇実」 「うん、いいね」  学友を、呼び捨てにするなんて! 「ああ。公立高校って、こんなに刺激的な場所だったんだね」 「大げさだなぁ」  ほんの一握りの世界しか知らなかった要には、全てが新鮮だった。

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