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第三章・5

「参ったな……」  カフェのすぐ近くだから、と立ち寄って見せてもらった要のマンションは、この街で一番高価な建築だった。 「かたや僕は、こんなに小さな安アパート」  僕だって社長の息子だ、と語ったこの口が恨めしい。  父と住んでいた住宅は、会社が経営難に陥った時に売ってしまった。  伯父が一緒に住もう、と声を掛けてはくれたが、宇実は独り暮らしを決めた。  要と同じく、自立心を養うためだ。  そして、独り暮らしももう慣れたと思っていたが……。 「どうしてだろう。何だかすごく、寂しいよ」  要と別れ一人になると、急に孤独感を覚えた。  狭いはずのアパートが、やけに広く感じる。  いや、この宇宙にたった一人になってしまったような。 「要さん」  孤独の恐怖から逃れるために、宇実は別れたばかりの名を声に出して呼んだ。  要さん、ともう一度つぶやき、脚の細いベッドに倒れ込んだ。 「ああ、もう。僕、おかしいよ……」  そして、そのまま眠ってしまった。

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