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第三章・6

 孤独感を覚えているのは、宇実だけではなかった。 「勢い勇んで、独り暮らしを始めてみたが」  これはなかなか一筋縄ではいかないな、と要はリビングの分厚いソファに掛けていた。  いや、昨日までは平気だったのだ。  自由の羽をのびのびと伸ばし、かねてから食べてみたかったカップラーメンも口にした。  気ままに、何をしてもいいはずなのに。 「宇実」  寂しさを埋めるために、出会った人の名を虚空に呼んだ。  ああ。それだけで、勇気が湧いてくる。 「私は、一人じゃない。宇実がついていてくれるんだ」  明日もまた、学校で会おう。  いや、同じ電車に乗ろう。  待ち合わせて、一緒に登校しよう。  宇実に連絡するために、要はスマホを取り出した。  今日を、明日へ繋ぐために。

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