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第四章・4

「要さん」  言葉にするその名は、孤独を埋める呪文だったはずなのに。 「何だか、遠い人になっちゃったみたい」  あまりに大きな財力の差を見せつけられ、宇実は凹んだ。  そこに、バスルームのサッシが開いた。 「宇実は長風呂だね」 「か、要さん!?」  そこには、素裸の要が立っていた。  いや、立っているだけではなく、どんどん中へ入ってくる! 「待ちきれなくて、来ちゃった」  鼻歌を歌いながら、シャワーを使う要。  目のやり場に困り、宇実はバスタブ近くの窓の外を眺めた。  日が、長くなってきている。  春の夕日は、赤く大きかった。  やがて要が洗髪まで済ませて、バスタブに身を沈めて来た。 「せ、狭いよね。僕、もう上がるから!」 「大丈夫だよ。一緒に100まで数えよう」  ね、と微笑む要は、両手を合わせて湯を宇実に向かって飛ばした。  広いバスタブは、二人が浸かっても充分だ。  要の笑顔に、宇実もつられて微笑んだ。

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