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第四章・5
「じゃあ、100まで数えるよ?」
「うん。二人で数えよう」
向かい合って、二人で声を揃えて数を数えた。
心が、遠い過去を呼んでくる。
(ああ。何だか、父さんと一緒にお風呂に入ってるみたい)
宇実は要に、肉親にも似た安らぎを覚えていた。
要さんは、確かに超・お金持ちだけど。
頭脳明晰、スポーツ万能。
裕福で、ルックスが良くて、人当たりがいいけれど。
でも、僕と仲良くしてくれる。
誰より僕と、親しくしてくれる。
『宇実と一緒にいると、心が安らぐんだ』
要の言葉を思い出し、宇実は頬を染めた。
(嬉しいな)
そして、100の数字を口にした。
「はい、終わり。宇実、のぼせた? 顔が赤いよ」
「うん。少しだけ」
バスタブから出る頃には、宇実の心は落ち着いていた。
目の前にいるのは、ただのお金持ちの子息ではない。
優しい、要その人だった。
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