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第五章・5
「僕も、要さんのことが好きだよ」
「ありがとう、宇実」
二人でつないだ手を、そっと握り合った。
「私と。……交際してくれる?」
「……うん」
囁き合い、自然とキスをした。
柔らかく温かな、可愛らしいキスを。
要の熱を受け止めながら、宇実は考えていた。
(要さんは、8月で僕の前から去ってしまうんだ)
海外の大学へ、入学するために。
それまでの、期間限定の恋。
だったら、いいじゃないか、と思った。
(恋に溺れることは、ないんだから)
少し、胸が痛い。
あまりに短い恋と解っていながら、一歩踏み出した。
でも、後悔はしない。
そう決めて、要の手をしっかりと握った。
握り返してくれる彼のぬくもりを感じながら、眠った。
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