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第五章・6

「ありがとう、宇実」  先にすやすやと眠ってしまった宇実の手を握り直し、要はそれを頬まで持ってきた。  新しい関係が、二人の間に開けた。 「宇実が、私の恋人」  そう思うだけで、嬉しさがこみ上げてくる。  そして、寝付けなかった毎日が嘘のように、眠りの神がやって来た。 「ああ。もう少し、君の寝顔を見たかったんだけどな」  しかし、瞼が落ちてくる。  そっと目を閉じると、宇実の体温を感じた。  確かにそこにいてくれる、温かな人の存在。  途方もない安らぎを、覚える。 「宇実、おやすみ」  今夜は、いい夢が見られそうだよ。  愛しい人の熱を感じながら、その香りを確かめながら、要も眠りに就いた。  明日の予報は、晴れ。  新たな彩りで迎える朝を期待しながら、眠った。

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