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第六章 海へ
「おはよう」
心地よいまどろみの中、瞼を開けると、そこには宇実の笑顔があった。
「……おはよう」
「おはよう、寝坊助さん。要さんは、案外朝に弱いんだね?」
「そんなわけではないけど」
そうではないが、久々に熟睡した心地だ。
寝つきが悪くなく、深夜に目覚めることも無かった。
「宇実のおかげだよ」
君が隣にいてくれたから、よく眠れた。
そう言って、要は上半身を起こした。
「ぐっすり眠って、すっきりした!」
「だったら、朝食の後で、出かけない? 見せたいもの、あるんだ」
目を輝かせて、そう持ち掛ける宇実だ。
「見せたいもの? 何だろう」
「見てからの、お楽しみ」
少しはしゃいで見える彼に、要は小首をかしげた。
どうしてかな。
昨日と違う宇実が、いる。
確かに、好きだと告白して。
交際して欲しいと、願って。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
それはたぶん、宇実の私への気持ちが、恋に傾いたからだろう。
そう考えて、要はベッドから降りた。
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