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第六章・2

 朝食の後、要と宇実は電車に乗った。  土曜日の午前中は乗客も少なく、二人はシートに掛けて揺られた。 「わぁ、海が見える!」 「景色、いいでしょう」  その海へ行くのだ、と宇実は要に打ち明けた。 「もしかして」 「そう。要さんの、思い出の海だよ」  幼い頃、ヨットで遊んだ美しい海。  そこへ招待されるなんて! 「感激だよ、宇実。ありがとう!」 「もうすぐ、着くよ」  二つほど駅に停車した後、電車は目的地に着いた。 「ああ、ここ! このヨットハーバー、覚えてるよ!」  色とりどりの帆を持つたくさんのヨットが、入り江に停泊している。  潮の香りを吸って、要は思い出にしばし浸った。 「今日は要さんに、新しい思い出を提供するよ」 「何だろう。ワクワクしてきたよ」  地元の遊覧船が発着するターミナルに、宇実は要をいざなった。

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