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第六章・6
それを聞き、職人たちははやし立てた。
「やるねぇ、宇実くん!」
「隅に置けないな!」
「色気づきやがって!」
冷やかされ、宇実は耳まで赤くなってしまった。
「もう。だから、言いたくなかったのに」
そんな彼に、要は苦笑した。
「なら、言わなきゃ良かったのに」
「うん。でも、大切なことだから。皆に報告したかったんだ」
そうだね、と要はうなずいた。
「天羽 要です」
要も、胸を張って挨拶をした。
宇実の恋人の自覚をもって、凛とした声を上げた。
よろしく、と職人たちも笑顔だ。
その笑顔に、要は彼らと宇実の間につながる深い絆を感じた。
(現場の人間に、これほど愛されているなんて)
「宇実」
「な、何?」
「惚れなおしたよ」
「もう! 要さんまで!」
二人の笑顔は、波のきらめきにも負けないくらい輝いていた。
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