41 / 94
第八章・3
バスルームから出て、小さなくしゃみをする宇実に、要はすまなさそうな声を掛けた。
「湯冷めしたかな。ごめん」
「ううん、大丈夫」
二人で、どれくらいの時間を過ごしていたのだろう。
あっという間のような、長い長いような。
不思議なひとときを、味わった。
だがそれは、二人の心と体をさらに近づけるには充分だった。
ベッドに潜り込んだ要と宇実は、自然にキスを交わしていた。
「宇実……、好きだよ」
「僕も、要さんが大好き」
要の広い手のひらが、パジャマ越しに宇実の肩を、腰を撫でる。
「……いい? 嫌だったら、私はこのまま眠るよ」
「……いいよ」
「途中で辛くなったら、すぐにやめるから。正直に話して」
「ありがとう」
でも、心地いいのだ。
要に撫でてもらっていると、体の奥が疼いてくる。
(痴漢に同じことされても、気持ち悪いだけなのに)
宇実は軽く目を閉じた。
ともだちにシェアしよう!