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第九章・3

 薄く唇を開け、宇実は余韻の波間を漂っている。  汗で額に張り付いた髪を、要は指先で梳いてあげた。 「あ……」 「ありがとう、宇実」  愛してるよ、と囁き、その体を緩く抱いた。  そんな要の首に腕を回し、宇実は頬を摺り寄せた。 「要さん、僕も愛してる」  触れるかどうかの、羽根のようなキスをし、二人はそのまま瞼を閉じた。  閉じたままで、話した。 「宇実。シャワー、使う?」 「要さんが先で、いいよ」 「一緒に」 「うん」  ああ。でもこの気怠い時間が、あまりにも心地いい。  もう少し、このままで。  愛し合った時間を、温め続けたい。  二人はそうして、まどろみの淵に沈んでいった。

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