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第九章・5

「すごい。要さん、シェフみたい!」 「気に入ってくれた?」  味はもちろんのこと、見た目も美麗な朝食に、宇実は目を円くした。  グリーンサラダに、厚切りのベーコン。  フルーツヨーグルトに、ふわふわのオムレツ。 「すごく、美味しいよ」 「良かった!」  お腹がいっぱいになると、要は宇実をオーディオルームにいざなった。 「宇実は、レコードとか聴く?」 「CDなら、よく聴くよ。父さんと母さんが遺してくれたものが、いっぱいあるんだ」  では、と要は一枚のレコードをセットした。  優しい、透明感のある旋律。 「あ。この曲、知ってる」 「有名な曲だからね」  要のかけた音楽は、『Moon River』。  世界中の人々に愛されている、名曲だった。

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