50 / 94
第十章 いつも傍にいたい
日曜日の夜、要は放心していた。
隣に宇実は、もういない。
自宅アパートへ、帰ってしまったのだ。
一緒に音楽を聴き、共に歌い。
街へ出て、ショッピングをして、映画を観て、お茶を飲んで。
夕食を食べ、お喋りをし、キスをした。
「だのに、苦しい」
明日も、朝から彼に会える。
一緒の学校へ、同じ電車で通えるのだ。
それなのに、要の心は虚ろだった。
今まで、こんな気持ちは味わったことがなかった。
「恋は、楽しいだけのものだったのに」
宇実と離れている時間が、こんなにも苦しい。
会いたい。
今すぐにでも。
「しかし、さっき電話を終えたばかりだ」
あまり付きまとうと、わずらわしく思われるかもしれない。
そう考え、思い切って立ち上がるとバスルームへ向かった。
ともだちにシェアしよう!