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第十章・4

 私と、暮らさないか?  そう、要は言ってしまっていた。  シャワーを使う前は、あまり付きまとうと、わずらわしく思われるかもしれない、などと考えていたというのに。 「私のマンションで、一緒に。アパートを出て、引っ越してこないか?」 『ま、待って。急にそんな』 「宇実と離れると、身を裂かれたような気がするんだ。ひどく、苦しいんだ」 『要さん』  宇実も、スマホを握り直していた。  要さん、僕と同じことを考えてる。  別れたばかりなのに、何だか寂しくて。  居ても立っても居られなくて、電話した。 『僕も、要さんと一緒にいたいよ。いつも傍に、いたい』 「宇実。じゃあ……」 『でも、ちょっとだけ待って。こんな大切なこと、すぐには決められないから』 「うん。それは解る」 『伯父さんに、相談するよ。許しが出たら、その時は……』

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