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第十章・7

 解ってる、と宇実は答えた。  半年も持たない、この恋。  だからこそ。 「だからこそ、精いっぱい愛したいんだ。たくさん思い出を作りたいんだ」 『宇実くん……』 「伯父さん、お願い。僕、要さんの傍にいたい」 『……解ったよ。ただ、条件がある』 「条件?」 『今住んでいるアパートは、完全に引き払うこと。そして、天羽さんが海外へ行った後は、私の家に移り住むこと。この二つだ』  伯父は、要が去った後のことをすでに心配していた。  おそらく宇実は、その孤独に耐えられまい。  せめてその傍らで、癒してあげたかった。  そんな心を知ってか知らずか、宇実は明るい声をあげた。 「ありがとう、伯父さん!」  少年らしい、前しか見ない目で、未来を築こうとしていた。

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