56 / 94
第十章・7
解ってる、と宇実は答えた。
半年も持たない、この恋。
だからこそ。
「だからこそ、精いっぱい愛したいんだ。たくさん思い出を作りたいんだ」
『宇実くん……』
「伯父さん、お願い。僕、要さんの傍にいたい」
『……解ったよ。ただ、条件がある』
「条件?」
『今住んでいるアパートは、完全に引き払うこと。そして、天羽さんが海外へ行った後は、私の家に移り住むこと。この二つだ』
伯父は、要が去った後のことをすでに心配していた。
おそらく宇実は、その孤独に耐えられまい。
せめてその傍らで、癒してあげたかった。
そんな心を知ってか知らずか、宇実は明るい声をあげた。
「ありがとう、伯父さん!」
少年らしい、前しか見ない目で、未来を築こうとしていた。
ともだちにシェアしよう!