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第十一章 急いで

 初夏・5月になった。  要と宇実は、幸せだ。  同棲を始めてからケンカもせず、素敵な日々を過ごしていた。 「宇実。ね、いいかな……」 「ダメ。明日、学校あるから」 「学校、ったって。模試だけじゃないか」 「良い点取りたいから、だーめ」  ベッドの上で、宇実は要に可愛いキスをし、そのまま瞼を閉じてしまった。 「仕方がないな」  諦めて、要もその瞼にキスを落として眠りに就く。  二人で同じベッドにまどろみながら、宇実は考えていた。 (模試で、いい結果が出せますように)  大学進学はしないつもりの宇実だったが、成績は優秀でいたかった。  すでに、有名一流高校を首席で卒業している、要。  そんな彼に、一歩でも近づきたかった。

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