57 / 94
第十一章 急いで
初夏・5月になった。
要と宇実は、幸せだ。
同棲を始めてからケンカもせず、素敵な日々を過ごしていた。
「宇実。ね、いいかな……」
「ダメ。明日、学校あるから」
「学校、ったって。模試だけじゃないか」
「良い点取りたいから、だーめ」
ベッドの上で、宇実は要に可愛いキスをし、そのまま瞼を閉じてしまった。
「仕方がないな」
諦めて、要もその瞼にキスを落として眠りに就く。
二人で同じベッドにまどろみながら、宇実は考えていた。
(模試で、いい結果が出せますように)
大学進学はしないつもりの宇実だったが、成績は優秀でいたかった。
すでに、有名一流高校を首席で卒業している、要。
そんな彼に、一歩でも近づきたかった。
ともだちにシェアしよう!