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第十一章・2

 学校帰り、電車に揺られながら要は宇実に問いかけた。 「テストの出来、どうだった?」 「うん。今までで一番、簡単に解けたみたい」  要さんに、勉強を見てもらっているおかげだね、と宇実は笑った。 「宇実は呑み込みが良いから、教えがいがあるよ」  この分だと、偏差値の高い大学も狙える。  要は、宇実の学力が惜しかった。 「本当に、進学はしないのかい?」 「要さん、伯父さんと同じことを言うね」  宇実の伯父は、彼を大学まで行かせたがっていた。  受験料や学費は何とかするから、と。 「私も、進学を勧めるよ。経営者の学歴で、人物評価する人間もいるからね」  いずれ継ぐ会社のためにも、と要に言われると、宇実も唸った。 「考えてみるよ」 「うん」  伯父に言われても反発心しか湧かなかった進学話だが、要の手にかかると素直に聞き入れてしまう宇実だ。  こんな具合に、魔法をかけられながら、日々を過ごしていた。

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