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第十一章・6

「宇実と出会って、もう一か月以上経つけれど」  毎日が、新しい喜びに満ちている、と要はハンドルを握りながら言った。 「磯遊び、だなんて。宇実と一緒でなかったら、きっと一生味わうことは無かったよ」 「僕だって。もう二度と磯遊びはしないんだろうな、って思ってた」  要さんと出会えて良かった、と宇実は白い歯をこぼした。  大丈夫。  私たちは。  僕たちは。  とてもいい関係を、築いている。  やがて来る別れからは目を逸らし、二人は歩んでいた。  せめてそれまで、楽しい思い出を。 「宇実。夕食は、私に任せてくれる? 素敵なレストランを、見つけたんだ」 「ありがとう。要さんの好きなところに、連れてってよ」 「じゃあ、少しドライブしよう」 「うん!」  少しアクセルを踏んだだけで、車は滑るように加速する。  急いで。  あまりにも、急いで。  二人は、急いで生きていた。

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