65 / 94
第十二章・3
天羽家の御用達、となれば、宇実の真珠に箔が付く。
そう、要は考えたのだ。
「でも。うまくいくかなぁ」
「大丈夫、安心して」
不安げな宇実を励ますと、要はスマホを操作した。
まずは、メールを送る。
すでに成人し、父を助けながら会社の経営に携わっている兄は、多忙だ。
いつ電話していいかの、お伺いを立てた。
やがて、正午近くに返信が来て。
「今晩の9時以降なら、いいそうだよ」
「ありがとう、要さん」
二人で、ドキドキしながら午後を待った。
9時を計って電話をすると、兄はすぐに出てくれた。
「お兄様、お久しぶりです」
『久しぶり、ったって。まだ二ヶ月しか経っていないよ?』
声を立てて笑うところを見ると、兄は今、ご機嫌が良いようだ。
要は一安心して、要件を切り出した。
ともだちにシェアしよう!