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第十二章・4
「単刀直入に言います。実は、お兄様にお願いがあります」
『何だろうか』
「お兄様が婚約者・三木(みき)さまに贈るジュエリーに、清水真珠のパールを使っていただきたいのです」
『そう来たか!?』
喉で笑う兄を、要はいぶかしく感じた。
「お兄様?」
『いや、君が清水真珠の御子息と交際しているとは知っていたが』
「え!?」
『天羽家が、要を野放しにしておくはずがないだろう』
聞けば兄は、要の身辺を常に警護、調査、報告させているという。
『君が独り暮らし初日に、カップラーメンを夕食にしたことも、知っている!』
「お兄様、勘弁してください……」
『安心しなさい。お父様の耳には、入れていない』
「では、宇実とのことも」
『うん。要らぬ心配は、無用と思って』
要は、胸をなでおろしていた。
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