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第十二章・6
(軽はずみなこと、か……)
一瞬眉根を寄せた要だったが、心配そうにのぞきこむ宇実に、明るい笑顔を向けた。
「宇実。お兄様が、君の真珠を使ってティアラを作ってくださるそうだ!」
「えっ!? ほ、本当!?」
「ああ。このことが社交界の噂になれば、みんなこぞって宇実の真珠を買い求めるよ」
「う、嬉しい……!」
このこともホームページに載せよう、などと計画する時間は、楽しい。
要は、経営について考えていた。
(こんな風に将来働けたら、どんなにいいだろう)
想像し、計画して。
(隣に、宇実がいれば)
『軽はずみなことだけは、するなよ』
兄の言葉が、妙に心に刺さっていた。
(この愛は、軽はずみでも何でもない)
私は、心から宇実を大切に想っているんだから。
傍には、嬉しそうな宇実の笑顔がある。
それは要の胸に刺さった言葉を、消してくれた。
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