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第十三章 海難
7月に入り、梅雨も明けた。
眩しい夏が、やって来た。
「6月の業績、大幅アップしたよ~!」
ありがとう、要さん。
そう言う宇実の表情は、笑顔だ。
昨年の6月を、ぐんと超える売り上げに、喜んでいる。
そんな宇実に、要は笑顔を返した。
「私は、何も。お兄様のおかげだよ」
「よろしく言っておいてね!」
そう。これは、お兄様のおかげ。
要は、密かにもどかしさを感じていた。
マネーを動かし、市場を左右する。
それは、要にはまだできない。
(早く成人して、一人前になりたい)
そんな風に、思うようになっていた。
「要さん。アイス、食べる?」
「食べる!」
こんなところは、まだまだ子どもなのだが。
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