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第十三章・3
「宇実。何をそんなに不機嫌な顔をしているんだい?」
指先で、要は宇実の眉間を伸ばしてみせた。
「わぁ。やめて、要さん。くすぐったいよ!」
宇実は要に会ってから、辛い、とか、苦しい、とかいう負の感情に支配されないようになっていた。
常に、前向きな要。
辛い苦しいと言う前に、傾向と対策をすぐにはじき出す。
そんな彼の生き方に、感銘を受けていた。
「ジェットスキーやクルーザーが暴走して、海の人たちを困らせているらしいんだ」
「マナーがなってないなぁ」
「うん。だから僕、週末に海に行ってお願いすることにしたよ」
「ジェットスキーや、クルーザーに?」
首を縦に振る宇実に、要もうなずいた。
「もちろん、私も同行するよ」
「いいの?」
「みんなの海は、みんなで守らないとね」
「ありがとう、要さん」
要が傍にいてくれれば、心強い。
宇実は、気を引き締めて週末を待った。
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