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第十三章・5

「困ったなぁ。こうなったら、やっぱり海上保安庁の人に知らせようかな」 「宇実の声を聞かないなんて。彼らには、天罰を下して欲しいものだ」  港内は、徐行が原則だ。  それなのに、猛スピードで海へ出ていくクルーザーを、二人は苦々しく眺めた。 「港に戻ってきたら、僕もう一度頼んでみるよ」 「さすがは、宇実だ」  それまで時間を潰そうと、海辺のカフェに入ってお茶を飲んでいると、宇実に電話がかかった。 「伯父さんだ」  どうしたんだろう、と通話を繋ぐと、伯父の慌てた大声が響いてきた。 『宇実くん、大変だ! 例のクルーザーが、事故を起こした!』 「事故!? 僕、さっきその船の人と話したばかりだよ!?」 『スピードを上げたまま浅瀬に乗り上げて、大破したんだ!』 「え!? 乗ってた人たちは、大丈夫なの!?」 『今、漁船が出て救助に当たってる』  心優しい宇実は、どうかケガや死亡事故になりませんように、と祈ったが、伯父はさらに続けた。 『それが。燃料タンクが破損したらしくて、海に油が流れ出てるらしいんだ!』 「海に、油が!?」 『大変だよ、宇実くん。このままだと、アコヤガイが死んでしまう!』

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