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第十五章・2

「要さん、金魚すくいしよう!」 「え? うん、だけど……」 「僕が、ちゃんと育てるから!」  宇実は明るくそう言うと、店主から二つポイを受け取った。 「はい。これで、すくってね」 「ありがとう」  宇実は、不自然にはしゃいでいる。  彼も、別れを間近に控えて、心が乱れているのだ。  無理して明るく振舞い、寂しさを紛らわしていた。 「ほら、こんなに大きな出目金すくったよ!」 「やるなぁ、宇実。よし、じゃあ私も!」  要もまた、見事に赤い金魚をすくい上げた。  紐付きの小さなビニール袋に泳ぐ金魚を手に、要は嬉しそうだ。  時々立ち止まっては、目の高さまで持ち上げて、その様子を見ていた。 「こんなに小さな金魚を見るのは、初めてだ」 「要さんの家にも、金魚がいるの?」 「大きなランチュウが、10匹ほどいるよ」 「すごい!」  いつか、見てみたいな。  要さんの金魚。  だがそれは胸の奥にしまい、宇実はただ歩いた。

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