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第十六章・5

「ところで、君はどうして線路を走って来たんだね。名前は? 学校は?」  駅員がいぶかしそうに掛ける尋問をぬって、優しい声が聞こえてきた。 「宇実……、やっぱり来てくれたんだね!」 「要さん?……要さん!」  ホームには、手荷物を下げた要が立っていた。  宇実がその胸に飛び込む前に、要は駆けだしていた。 「宇実! 会いたかった!」 「要さん!」  泥に汚れ、ほこりにまみれた宇実を、要は抱きよせた。  高価なスーツが、台無しだ。  それでも構わず、宇実を抱きしめた。 「ダメだよ、要さん。行っちゃダメだ……!」 「うん」 「ずっと。一緒にいよう……!」 「うん」 「ずっと、ずっと。一緒に……」 「うん。うん……」  ホームで、二人抱き合って泣いた。  駅員は笑顔を残し、そっとその場を去って行った。

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