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濡羽と黄金 11
「痛かったろう?」
「ん……」
「綺麗な体なのに……」
「へ⁉」
一際大きく跳ねた後、微かに荒い息をかい潜るようにしてるりは「もういい」と言って逃げようとする。
それは、まるで掴まえた蝶々が手の檻からもがいて飛んで行く様子に似ていた。
幼い頃に蝶々を逃がしてしまった寂寥感を思い出して……
触れていた脇が離れ、じわりと増していた熱が霧散することに耐え切れなくて、とっさにその肩を掴んで押さえつける。
「 あっ」
幸い、体勢を崩して倒れた先は古臭い布団の上で、るりを傷つけることはなかった。
「うたろ……」
真っ直ぐに見下ろすと気恥ずかしいのか耳を微かに赤くして逃げるように視線が泳ぐ。
「あの、ありがと、楽になった よ」
もじもじと派手な着物の襟を搔き集め、懸命にそこを隠そうとするいじらしさにふと笑いが漏れた。
安っぽい薄い着物では何をどうしてもそこは隠しきることができず、俺が遣った視線に恥じらうように震えている。
柔らかく、言葉の通りそこに手を当てていただけだと言うのに、俺の熱はるりを高ぶらせてしまったらしい。
「卯太朗?」
そろりとこちらを見上げる目は、仕事の仮面の剥がれたそれだ。
「そ、の……ごめん、ちゃんとやるから。おねがい……あんまり見ないで……」
細く指が亜麻色の髪を掴んでくしゃくしゃと混ぜるようにして顔を覆い隠してしまう。
けれど紅色に染まった貝殻のような耳は隠されておらず、それが今どう言った心境なのかを何よりも明確に伝えてくる。
桜貝のような色をした耳をくすぐってやると、「ひゃぁ」とか細い悲鳴が上がった。
「るり、顔を見せておくれ」
幾度かくすぐってやると、観念したのかそろりと鮮やかな虹彩が髪の隙間から覗く。
ちょっと怯えたような、それでいて恥ずかしがっているような顔にふと笑いを漏らすと、むっとした表情を見せてさっと俺を引き倒した。
まるで猫の目のようにあっと言う間に表情を変えたるりは、薄い唇を舌でぺろりと舐めてから俺の服へと手を伸ばす。
柔らかい指の動きだ。
それが止める間もなく服を乱し、先程のように逸物を取り出して焦らすように撫で上げる。
今度は止めないでいると、小さく笑ってからなんの迷いもなくそれにしゃぶりついてきた。
小さな口いっぱいに頬張り、軟体動物のような舌を絡みつかせてこられると、思わず低い呻き声が喉から零れてしまう。
じゅぷりと耳を打つ水音と、湿った温かな咥内の感触に思わず腰が跳ねた。
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