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血 1

 碧と皓の絵の前に立つ。  俺の絵と似ているかと自問してみて、答えは……どうだろうか?    良くわからないと言うのが感想だ。 「……俺達は、本当に兄弟なのだろうか?」  からかわれただけではないかと思ったが、森田がそこまでする理由がない以上、俺と翠也との間には共通する血があるのだろう。 「卯太朗さん」  涼しげな声にはっと振り返った。 「このように暗い中でどうされたんですか? 昼間のことでお疲れですか?」  洋服ではなくいつもの着物姿の翠也を見ると、昼間のことがすべて夢だったのではと思えてくる。 「いや、考えごとだよ」  そう返し、入り口で立ち尽くす翠也を手招く。   「何か話があるんだろう? 入っておいで」 「いえっ……話と言うよりも、謝罪がしたくて……」 「謝る?」  翠也は迷うように言葉を探す。 「  貴男の前で、あの人と会っていたので」  ああ と、昼間の少女を思い出す。  並んで立つ姿に腸の煮えくり返る思いをした。  ただの嫉妬と言うだけでなく、傍らに堂々と寄り添える彼女が憎らしくて、悔しくて……  屋敷に帰れば翠也と互いの気持ちを深め合いたいと思っていた。  なのに、  突きつけられた現実は…… 「触れてもいいかい?」 「はい、もちろん」  許可を得て触れる頬は、うら寂しさを滲ませ始めた空気に晒されて冷たい。 「冷えてるね」 「温めてくださいますか?」  頬に当てた手に擦り寄る。  これが翠也の精一杯の誘いで、いつも嬉しく思っていた行為だった。  けれど、いつものように抱き合い体温を与える行為を、弟と知った今……    自分の言葉に恥じ入る翠也の姿が今までと変わったわけもなく、ましてや今でもそれに対して好ましく、愛おしく感じると言うのに。  弟。  それを知っても、やはり甘い皮膚を堪能したくて堪らなかった。  唾液を啜り、愛で、すべてを自分のものだと堪能して、苦みのある淫水を飲み下したくてたまらない。  俺は、翠也が愛おしくて愛おしくて気が狂いそうで……  弟と知って尚、欲情する自身の畜生加減に昏い笑いが漏れた。  るりが日本画を習いたいと言い出した。 「油絵じゃなくていいのか?」  思わずそう返したのは、玄上が最初に見つけた才能が、同じ分野で花開いてくれることを願っているんじゃなかろうかと思ったからだ。

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